ミュージカル『ワンス』~2回観て気づいた“静かな愛のことば”~

ギターとピアノで静かな旋律に言葉がのり、歌われる「Falling Slowly」。
聞いたことがある方もいるかもしれません。
アイルランド映画が原作のミュージカル『ワンス』が日本初上演――となれば、
赴かないわけがない、かてこさん。

弾き語りが中心となるであろう“舞台”は、果たしてどんな世界だったのか。
さっそく話を聞いてみました。

実は大きな反響を呼んだ原作映画

原作は、2007年に公開されたアイルランドの音楽映画『ONCE ダブリンの街角で』。
ダブリンを舞台に、ストリートで弾き語りをしていた地元の男性と、
チェコ移民で花売りの女性が音楽を通して心を通わせていくラブストーリーです。

当初は全米2館での公開から口コミで話題を呼び、140館まで拡大公開。
代表曲「Falling Slowly」は、第80回アカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞しました。

その後、2011年にミュージカル版が誕生。
ニューヨーク・シアターワークショップでの初演を経て、翌2012年にブロードウェイへ進出。
トニー賞11部門ノミネート、作品賞を含む8部門を受賞するという快挙を達成。
さらにキャストアルバムもグラミー賞を受賞し、まさに“音楽と演劇の融合”を象徴する名作となりました。

そして2025年――日本カンパニーによる初の本格上演が実現。
長年愛され続けてきた作品が、日本のキャストと共に新たな形で息づきました。

(2025年かてこさん撮影:日生劇場前にて)

2度観て気づいた、重要なシーンの演出

『ワンス』は、かてこさんにとって“2回観たことで深まった作品”のひとつ。

1回目の観劇では、弾き語り中心の演出にもう少し力強さが欲しい印象を受けたそう。
全体的にも少し暗めで、主人公とヒロインの関係性がつかみづらかったとか。

けれど、2回目の観劇で大きな発見がありました。
今回はセンター前方7列目。オペラグラスも不要の距離で、表情の細やかさまで伝わる席。

そして迎えた物語の重要なシーン。
舞台上で主人公(アイルランド人の青年)が台に立ち、
ヒロイン(チェコ人の女性)に向かって問いかけ、彼女がチェコ語で答えます。

Miluju tebe

1回目では、心の距離が少しずつ縮まっていく二人が
ただ一緒にいる時間を惜しむように見えただけのシーン。

しかし、実は――
その“台”の足元部分がスクリーンになっており、そこにチェコ語の翻訳が映し出されていたのです。

「あなたのことが好きです」

この一文を、2回目の観劇で初めて見つけたかてこさん。
ヒロインには夫と子どもがいる――叶わぬ両片想いの関係。
それでも、音楽と静けさの中で交わされたその言葉が、心に深く響いたといいます。

かてこさん

演者さんが“想い”を声や表情で伝えることは多いけれど、
“想い”そのものを演出で表現していたことに気づいた瞬間、胸を打たれました。
この演出に出会えただけでも、2回足を運んだ甲斐がありました。

観劇ド素人所感

『ワンス』の魅力は、派手な演出や高音の伸びではなく、
“沈黙の中にある音”と“語られない想い”の美しさ。

2回観たからこそ見えた、音楽と言葉の余白――。
それが、この作品の本当の魅力なのかもしれません。
観るたびに新しい発見があるのも、“舞台”の醍醐味。
同じ作品を2度観なければ気づけなかった重要な演出。
音楽が語り、沈黙が答える――。
『ワンス』は、そんな静けさの中にある愛の物語です。

そうだ、まずは映画を観てみよう。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(Coffee break…)
次のページをめくる前に、温かい一杯を。

ブルーボトルコーヒー

関連作品

ONCE ダブリンの街角で
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ
監督:ジョン・カーニー
形式:Blu-ray

Prime Video: once ダブリンの街角で (字幕版)

舞台ファイル:ミュージカル『ワンス』

かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通り。

【公演名】ミュージカル『ワンス』
【公演期間】2025年9月9日 〜 2025年9月28日
【会場】日生劇場
【原作】ジョン・カーニー(映画「ONCE ダブリンの街角で」脚本・監督)
【翻訳・訳詞】一川 華
【演出】稲葉賀恵
【音楽監督】古川 麦
【キャスト】
ガイ:京本大我 … 掃除機修理の仕事をしている。失恋を機にミュージシャンを諦めようとする。
ガール:sara … チェコ移民。路上演奏しているガイに偶然出会う。
ビリー:小柳友 … ピアノ店の店員。スペインとのハーフでガールに想いを寄せる。
エイモン:上口耕平 … スタジオエンジニア。
シュヴェッツ:こがけん … チェコ移民でガールの同居人。元デスメタルバンド。
アンドレ:竪山隼太・榎木淳弥(Wキャスト) … チェコ移民でファストフード店長。
バンク・マネージャー:佐藤貴史 … ガイとガールから融資相談を受ける。
レザ:土井ケイト … ガールの友人でチェコ移民。
元カノ:青山美郷 … ガイの元恋人。今はNYで別の相手がいる。
MC:新井海人 … オープンマイクの司会者。
ダ:鶴見辰吾 … ガイの父。妻を亡くし、家業の掃除機店で暮らしている。
バルシュカ:斉藤由貴 … ガールの母。チェコ移民。

観劇&ライブ プラスアイテム

劇場やライブ会場での時間、その日を、少しだけ快適にしてくれる観劇アイテムをまとめました。
みなさまの観劇体験がよりよいものとなりますように。

双眼鏡(オペラグラス)

2、3階席はもちろん1階席でも、表情や舞台設定、背景、衣装の細部まで楽しみたいときに。

はじめての双眼鏡なら、小型なものから。

性能にも多少こだわりたい方には。

水筒

開演前後の水分補給に。劇場周辺で飲み物を探す手間を減らせます。

観劇中の集中力を維持するもの

BASE FOOD

小腹が空いて観劇の集中力が途切れないように。開演前や休憩時間に、手軽に栄養補給を。

ナリス ぐーぴたっクッキー

小腹が空いたときのお守りに。観劇前後の軽い携帯食として。

立見観劇にあると便利なもの

折り畳み椅子

立見だからって、立ちっぱなしでいる必要はないので、持っていくだけで快適に。

夏の観劇にあると便利なもの

携帯扇風機

駅から劇場までの移動や、開場待ちの暑さ対策に。

日傘

劇場までの移動や、物販列に並ぶとき、日差し対策に。

ネッククーラー

真夏の観劇・遠征・屋外待機の体力温存、熱中症対策に。

関連記事

年間100公演以上を16年間継続しているかてこさん。
チケットの山とともに積み重なってきた観劇の記録が、
いまの「かてこさんの舞台帖」を形づくっています。

その原点と歩みは、こちらから辿ることができます。

年間100公演赴くかてこさん ~観劇ド素人が紐解く“舞台”の世界・序章~

16年分(記事投稿時)のチケットを並べて見えてきた、
かてこさんの観劇の歩み。

どんな作品を観て、どんな時期があって、
どうやって「年間100公演」という今に辿り着いたのか。

チケットの山が語る、かてこさん17年の“舞台”歴 〜年間100公演、その歩みを紐解く〜

年間100公演という歩みの中で、
かてこさんなりの“観劇スタイル”も少しずつ育ってきました。

観劇の日、その余韻をどう持ち帰るか。
そのひとつの答えを綴った記事はこちらです。

観劇の日に選ぶ一杯の話~舞台体験を最高に引き上げるもの~

舞台は、一期一会。
同じ公演は、二度とありません。

だからこそ――
「観たい」という気持ちを、最後まであきらめない方法もあります。

チケットを“譲る人”と“譲ってもらう人”でつながる、
もうひとつの観劇のかたちについてまとめました。

チケットを“譲る・譲ってもらう”ってどうするの?~はじめての“リセール文化”入門編~

同じ舞台でも、
どこで観るかによって、まったく違う作品に見えることがあります。

前方・後方・上手・下手――
席によって変わる舞台の見え方については、こちらにまとめています。

どこで観るかで、どれだけ違う?!〜かてこさんが語る、席の奥深さ〜