ミュージカル『ISSA in Paris』は、日本人なら誰もがその名を知る俳人・小林一茶をモチーフに、
史実と大胆な想像力を掛け合わせて描かれるオリジナル・ファンタジー・ミュージカルです。
作曲・作詞を手がけるのは、モーリー・イェストン氏。
ミュージカル『ナイン』『タイタニック』でトニー賞最優秀作詞作曲賞を2度受賞した、ミュージカル界の巨匠です。
学生時代に日本文学を深く学んだイェストン氏が、強く心を揺さぶられた一句――
「露の世は 露の世ながら さりながら」。
愛する存在を失った悲しみと、それでもなお生きようとする人間の感情を、
最小限の言葉で表現したこの俳句が、本作創作の出発点となったという。
脚本・訳詞は、ディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』で知られる
高橋知伽江氏。
演出は、ミュージカル『ナイン』でもイェストン作品を手がけ、厚い信頼を寄せられている
藤田俊太郎氏が務めます。
日本文学×ブロードウェイ文脈が交差する、新作オリジナルミュージカルとあって、
年間100公演以上赴くかてこさんも観にいってきました。

(2026年かてこさん撮影:日生劇場前にて)
現代のISSAと、若き日の小林一茶。時代を越えた出会い
物語の主人公は、現代東京に暮らすシンガーソングライター・ISSAこと海人。
突然母を亡くし、創作のスランプに陥った彼の脳裏に浮かぶのが、小林一茶のあの一句です。
母は生前、小林一茶には「空白の10年」があり、その間に鎖国下の日本を抜け出し、
パリに渡っていたのではないかという仮説を立てていました。
母の遺した想いと、自身が前へ進むための答えを求めて、海人はパリへ旅立ちます。
そこで彼が出会うのが、若き日の小林一茶――
交わるはずのなかった二つの人生が、異国の地で交錯するという、ファンタジックな設定です。
現代のISSAを演じるのは、確かな演技力と圧倒的な歌唱力で知られる
海宝直人さん。
若き日の小林一茶役には、次世代ミュージカル界を担う存在として注目される
岡宮来夢さんが出演します。

(2026年かてこさん撮影:日生劇場にて)

(2026年かてこさん撮影:「舞台セット撮影OK!」、素敵!)
「ファンタジー前提」で観ると、心に残る一作
物語はあくまでファンタジー前提。
「小林一茶が生きていた時代に、フランスに渡っていたとしたら?」
という大胆な仮定のもと、現在のISSAと過去の一茶が時空を越えて出会います。
母親を亡くし、創作に行き詰まっていたISSAは、
一茶との交流を通して、
自分が思っていた母親像が変わり、言葉と向き合い直すことになる。
一方、過去の小林一茶も、革命前夜のフランスで人々と出会い、
フランス革命を前に、日本へ戻る最後の機会を選びます。
そのフランスでの体験があったからこそ、
日本での小林一茶の俳句の隆盛へとつながっていく――
そう想像させる余白が、この作品の大きな魅力でした。

(2026年かてこさん撮影:舞台に並べられた小林一茶の俳句たち、圧巻です。)
言葉は、時代を越えて人を救う
『ISSA in Paris』は、
史実の正解を提示する作品ではありません。
けれど、
言葉が人をつなぎ、創作が再生のきっかけになるというテーマは、
現代を生きる私たちにも、確かに響くものがあります。
俳句とミュージカル。
一見遠い二つの表現が、パリという場所で出会い、
ひとつの物語として立ち上がる体験。
ファンタジーを受け入れる心の余白がある人ほど、
じんわりと後を引く一作になるはずです。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2026年かてこさん撮影:今日もすてきな観劇時間をありがとう!)
関連作品
Amazon 心を軽やかにする小林一茶名句百選 単行本 – 2023/7/1
齋藤孝 (著)
ミュージカル『ISSA in Paris』を観て、
小林一茶の言葉が胸に残った方へ。
一見ユーモアにあふれ、軽やかに口ずさめる一茶の俳句。
けれどその多くは、喪失や孤独、ままならない人生の中から紡がれた言葉でした。
本書では、齋藤孝氏が厳選した百の名句を通して、
一茶の人生と、その時々の心の動きが、やさしい言葉で紹介されています。
舞台で描かれた“空白の10年”を想像しながら読むことで、
『ISSA in Paris』という物語が、
さらに立体的に、解像度高く心に残る体験へと押し上げてくれるはずです。
俳句は、読む人それぞれの人生に寄り添うもの。
いまのあなたの心に響く一句は、どれでしょうか。
舞台ファイル:ミュージカル『ISSA in Paris』
今回、かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通りです。
【公演名】ミュージカル『ISSA in Paris』
【公演期間】2026年 01月 10日 〜 2026年01月30日
【会場】日生劇場
【原案・作詞・作曲】モーリー・イェストン
【脚本・訳詞】高橋知伽江
【演出】藤田俊太郎
【企画・制作】梅田芸術劇場
【キャスト】
海人(ISSA):海宝直人
小林一茶:岡宮来夢
ルイーズ:潤 花
テレーズ:豊原江理佳
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この舞台の記録も、
“舞台ファイル”のひとつにすぎません。
年間100公演以上を16年間継続しているかてこさん。
チケットの山とともに積み重なってきた観劇の記録が、
いまの「かてこさんの舞台帖」を静かに形づくっています。
その原点と歩みは、こちらから辿ることができます。
投稿後記|カーテンコールの、そのあとで
観終わったあと、静かに残ったもの
カーテンコールが終わっても、気持ちが切り替わらない時ありませんか?
ペンライトを振り、その場の一体感を全身で浴びた後、
そういう「参加の仕方」以上に、観終わったあとに
この作品は、じわじわと余韻が迫ってくる舞台だったように思います。
拍手が終わり、客席を立って、劇場を出たあとも、
すぐに日常に戻れなかった人は、きっと少なくないはずです。
観劇後の夜、どう過ごすか
すぐに言葉にしなくてもいい。
観劇後、誰かに感想を送る気分でもなく、
SNSに書き出すほど整理もできていない。
でも、
このまま眠ってしまうのは、
少し惜しい――
そんな夜もあります。
無理にまとめなくていい。
無理に誰かに伝えなくてもいい。
ただ、
余韻の中に、もう少しだけ身を置きたい。
でも――
誰かの声を静かに聴きたくなる瞬間は、
確かにあって。
文字より、声がちょうどいいとき
そんな夜に、「読む」よりも
誰かの声を静かに聴くという選択をすることがあります。
画面を見なくていい。
集中しなくてもいい。
ただ、耳を預けるだけ。
舞台の余韻を壊さず、
でも、ひとりきりにもなりすぎない。
その距離感が、ちょうどよく感じるからです。
Audibleという選択肢で余韻を楽しむ
そんな夜の過ごし方のひとつとして、
最近よく使っているのが、音声コンテンツです。
私が聴くジャンルは、
作品そのものではなく、
余韻に寄り添ってくれる音声です。
たとえば、
・演劇や表現について語られたもの
・創作にまつわるエッセイ
・人生や感情の揺らぎを、静かに語る言葉
「理解するため」ではなく、
「余韻を抱えたまま過ごすため」に聴くもの。
もし、
観劇後の夜を
少しだけ静かに過ごしたいとき。
最近はタイトルもジャンルも増え、
活用場面が増えたAudibleのような音声サービス。
舞台の余韻に浸りたい時、あなたはどう過ごしますか。
オーディオブックAudible