みなさまは、二人芝居を観たことはありますか?
漢字のイメージそのままに、演者さん2人だけで作り上げる演劇のこと。
一人当たりの舞台上のアクティング・エリアが広くなるとともに、
演者さんの全身全霊での演技力が試される、芝居の良し悪しが左右されるもの。
そのプレッシャーたるや、いかほどのものか――。

今回は、2009年のシス・カンパニー公演『バンデラスと憂鬱な珈琲』での初共演以来、
舞台の世界で互いをよく知る堤真一さん×中村倫也さんによる、二人芝居を観てきたかてこさん。

≪1対1≫で舞台上に立ち続ける、その芝居はどんなものだったのでしょうか。

“舞台上にも広がる「舞台」の世界”

IMMシアターで上演された舞台『ライフ・イン・ザ・シアター』。

劇団の先輩と後輩、楽屋から始まる物語。
舞台手前は基本的に楽屋であり、時にレッスンルーム、時に衣裳部屋へと姿を変えます。
2階建て構造で、舞台奥2階が“劇中の舞台”という設定。

演者さん2人が奥2階の舞台に立ち、その向こうに観客がいると見立てながら、
劇中劇のシーンを織り交ぜて進行していく構成です。

舞台を演じながら、劇団員の人生を見届けているような――
そんな不思議な時間が流れていました。

(2025年かてこさん撮影:IMM THEATERにて)

10年の時間を“芝居”で描く

物語の時間軸は約10年。
最初は、堤さん演じるベテラン俳優と、中村さん演じる新人の関係。
やがて立場が逆転し、後輩だった中村さんが名を上げ、堤さんが老いを感じ始めます。

セリフを交わすたびに、年月の重みが自然と伝わってくる。
それはメイクや衣装の変化ではなく、
二人の“演技の呼吸”で時間を描いているからこそのリアルさがありました。

台詞を噛んだのか、それも脚本の一部なのか――
観ている側にも判別がつかないほど、
“生”の舞台と現実が溶け合う瞬間が幾度も訪れます。

舞台の裏側、演劇への葛藤、歳を重ねること――そのすべてが会話の中に滲み出ており、
まさに舞台俳優の“生”を見せるような作品でした。

その先を観る側に委ねた演出

楽屋シーンで始まり、楽屋シーンで終わる。
しかも唐突に――けれど、舞台の中では繰り返される日常の風景。

10年という時間の流れの中で、老いをはっきりと自覚してしまった先輩俳優。
老いと向き合いながらも俳優であろうとすることを理解している後輩俳優。
終盤に見せた、後輩から先輩への問い掛けを、みなさまはどう受け止めたでしょうか。

舞台の中での10年前なら、後輩ならではの普通の問い掛けだったでしょう。
10年後の今となっては、意味深にも感じられる問い掛け。

その言葉に、俳優として、そして人としてのエールが込められていると受け止めたかてこさん。
舞台という“生”の場所で、二人の人生が重なるように幕を閉じますが、
観終わったあとも彼らの“その後”が続いている気がしてならない――
そんな余韻深い作品でした。

28年経て先輩役を演じる感慨深さ

かてこさんは2025年が初観劇でしたが、実はすでに何度か上演されている『ライフ・イン・ザ・シアター』。

1997年の日本初演では、先輩役を石橋蓮司さん、後輩役を堤真一さんが演じ、
シアタートラムのこけら落とし公演として上演されました。
2006年には市村正親さんと藤原竜也さん、2022年には勝村政信さんと高杉真宙さん、
そして2025年、堤真一さんと中村倫也さんの組み合わせで再演。

堤さんは、28年の時を経て“後輩”から“先輩”役へ――。
現実でも「時の流れ」を感じさせるエピソードに、胸が熱くなります。

もしかしたら、この先、時が流れて、中村倫也さんが先輩役を演じる未来もあるかもしれません。
そう思うと、なんとも感慨深いですね。

舞台の中での俳優の“生”と、現実での俳優の“生”が交錯する作品。
観劇ド素人のわたしにとって、またひとつ“舞台”の世界が広がった二人芝居となりました。

次は、体感して見えてくるものを、また記事にできたらと思うのでした。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2025年かてこさん撮影:愛笑夢笑夢シアターにてw)

舞台ファイル:「ライフ・イン・ザ・シアター」

かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通り。

【公演名】ライフ・イン・ザ・シアター
【公演期間】2025年 09月 05日 〜 2025年09月23日
【会場】IMM THEATER
【作】デヴィッド・マメット
【翻訳】小田島恒志
【演出】水田伸生
【キャスト】堤真一/中村倫也