「やんちゃでロックなモーツァルト」
――かてこさんがそう表現するミュージカル『モーツァルト!』。

クラシック音楽の天才、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。
『魔笛』『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』といった傑作を残した作曲家として広く知られています。
けれど、このミュージカルが描くのは“歴史に名を残す天才”ではなく、社会や家族に翻弄されながらも音楽を手放せなかった一人の青年。その姿は時に奔放で、時に苦悩に満ち、そして「音楽とともにしか生きられない人間」として舞台に立ち現れます。

今回は、年間100公演以上を観劇するかてこさんに、このクラシカルな演目を観続ける理由とその魅力を聞いてみました。

2014年初見の衝撃

かてこさんの初見は2014年、井上芳雄ヴォルフガング、ソニンコンスタンツェの組み合わせ。

当時は「演者さんたちの歌唱力が高い」「こういう感じの舞台なんだな」程度の感想だったそうです。
しかしソニン演じるコンスタンツェの演技には圧倒され、激情が伝わってくる歌唱に強烈な衝撃を受けたと振り返ります。

2018年印象が変わる二度目の観劇

二度目の観劇では、物語以上に「音楽の力」が心に響いたといいます。

代表曲「僕こそ音楽」「影を逃れて」「星から降る金」――。
一度耳にすると頭から離れない旋律が、舞台の面白さを底上げしました。

「あれ、モーツァルトってこんなに面白かったんだっけ?」

中でもかてこさんのお気に入りは、ヴァルトシュテッテン男爵夫人が歌う「星から降る金」。
歌唱力のある演者がキャスティングされており、抜群の安定感と伸びやかな歌声で、安心して没入できるのが魅力だといいます。

演者によって変わる「役」の印象

ヴォルフガング役もコンスタンツェ役も、演者によって印象が大きく変わるのも見どころのひとつ。
演者が役をどう理解し、どう表現するかによって、同じ役でもキャラクター像がまるで違って見えるのです。

かてこさんの場合は、激情を吐き出すようなソニンのコンスタンツェ像が強烈に記憶に残っています。
一方で、生田絵梨花・木下晴香・平野綾のコンスタンツェは、きれいで可愛い正統派という印象。優しく上品ながら、強いインパクトは受けなかったといいます。

幻となった2021年公演を経て、改めて魅了された2024年公演

2021年の帝国劇場公演はコロナ禍で中止となり、かてこさんにとって“幻の舞台”となりました。
その悔しさもあり、2024年公演は強い思いでチケットを取り、複数回足を運んだといいます。

古川雄大ヴォルフガングの繊細で華やかな歌声、真彩希帆コンスタンツェの安定感ある歌唱力。
そして「星から降る金」が響く瞬間、心が震え、物語に引き込まれていく感覚――。

観劇を重ねることで作品の奥行きや、演者ごとの解釈の違いによる“役の印象の面白さ”を強く実感したそうです。

(2024年かてこさん撮影)

観劇ド素人所感

演者によってアウトプットされる役の姿は、観る側の人や好みによっても印象が変わります。

これまで「ダブルキャストは主演の負荷分散のため」と思っていた観劇ド素人のわたしにとって、
かてこさんの話は大きな気づきになりました。
――それは「演者ごとに違うキャラクター像を楽しめる」ということ。

役に委ねられた自由度の広さが、生の舞台ならではの面白さにつながっているのではないでしょうか。
ダブルキャストの場合は、それぞれ観に行くのも楽しみ方のひとつなのだと気づいたわたしなのでした。

日々学びあり、まだまだ広がる”舞台”の世界、実に面白い。

舞台ファイル:ミュージカル 『モーツァルト!』

日本初演は2002年。これまでに2002年→2005年→2007年→2010年→2014年→2018年→2021年→2024年と継続的に上演されてきました。
かてこさんが実際に赴いた舞台日程は以下の通りです。

【公演名】ミュージカル モーツァルト!
【公演期間】2014年11月 08日 〜2014年 12月24日
【会場】帝国劇場
【キャスト】
ヴォルフガング・モーツァルト:井上芳雄 / 山崎育三郎
コンスタンツェ(モーツァルトの妻):ソニン
ナンネール(モーツァルトの姉):花總まり
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:香寿たつき
コロレド大司教:山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父):市村正親

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【公演期間】2018年05月 26日 〜2018年 06月28日
【会場】帝国劇場
【キャスト】
ヴォルフガング・モーツァルト:山崎育三郎 / 古川雄大
コンスタンツェ(モーツァルトの妻):平野綾 / 生田絵梨花 / 木下晴香
ナンネール(モーツァルトの姉):和音美桜
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世 / 香寿たつき
コロレド大司教:山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父):市村正親

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【公演期間】2021年04月 08日 〜2021年 05月06日 ※コロナで公演中止
【会場】帝国劇場
【キャスト】
ヴォルフガング・モーツァルト: 山崎育三郎 / 古川雄大
コンスタンツェ(モーツァルトの妻): 木下晴香
ナンネール(モーツァルトの姉): 和音美桜
ヴァルトシュテッテン男爵夫人: 涼風真世 / 香寿たつき
コロレド大司教: 山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父): 市村正親

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【公演期間】2024年08月 19日 〜2024年 09月29日
【会場】帝国劇場
【キャスト】
ヴォルフガング・モーツァルト:古川雄大 / 京本大我
コンスタンツェ(モーツァルトの妻):真彩希帆
ナンネール(モーツァルトの姉):大塚千弘
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世 / 香寿たつき
コロレド大司教:山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父):市村正親

【脚本・歌詞】ミヒャエル・クンツェ
【音楽・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ 
【演出・訳詞】小池修一郎
【制作】東宝