“観に行く”という一歩が生まれた日
2008年3月、『トゥーランドット』との出会いによって、かてこさんの“舞台”への思いは大きく変わりました。
そして半年後の同年9月、ついに——
自分の意志で、自分の手でチケットを取り、舞台を観に行くという一歩を踏み出します。
その作品が、イプセン作『人形の家』。
100年以上にわたり世界中で上演され、日本でも名優たちによって演じ継がれてきた名作です。
「観たい」気持ちが、最初の壁にぶつかる
一見シンプルに思える「観に行く」という行為。
ですが、観劇初心者にとっては、思いのほか高いハードルだったと、改めて気づかされることになりました。
“舞台”とひとくくりにしても、劇団・ジャンル・規模はさまざま。
情報も多く、その多くが“玄人向け”に感じてしまうのです。

かてこさん
「観たい気持ちはあるけれど、どこで・何を・どう観ればいいのかわからなかった」
「ネットには情報があふれているけど、キーワードがなければたどり着けない。
“舞台 2008 東京”で検索して、とにかく片っ端から追いかけていました」
先行抽選、会員登録……なのに当たらない!
4月・5月には、チケットぴあやe+(イープラス)で先行抽選に申し込み、
6月・7月には東宝ナビザーブ、日生劇場、世田谷パブリックシアター、赤坂ACTシアター、Bunkamura文化村倶楽部などにも会員登録を広げていきました。
でも、応募してもなかなか当たらない。
観たいのに、観られない。
「取れなかった舞台のほうが多かったと思います」
ーーかてこさん
“観たいのに観られない”——その悔しさすらも、“舞台”の世界の一部。
そう語るかてこさんに、どこか玄人の風格すら感じた観劇ド素人なわたしでした。
はじめて取れた、自分の一枚『人形の家』
そんな中、初めて取れたのが『人形の家』。
出演者に惹かれて勢いで申し込んだものの、実は内容はほとんど知らなかったそうです。
舞台は渋谷・シアターコクーン。
舞台を取り囲むように設計された劇場で、2階後方席から観た『トゥーランドット』とはまったく違う空気感と距離感が広がっていました。

舞台の“熱量”が、ここまで近くにあるなんて
肉眼で演者の表情が見える——それだけで、舞台の熱量が伝わってくる。
四方囲みの構造ならではの緊張感。
演者の立ち位置や動線、視線の交錯、舞台上の静けさの中にある濃密な演出——。
「舞台の向こう側に見えるお客さんの表情までもが、演出の一部のように感じました」
ーーかてこさん
飾りがないからこそ、響いてくるもの
『人形の家』は、舞台美術も衣装も決して派手ではありません。
けれど、だからこそ際立つのが、俳優たちの“演技”。
セリフの間合い。
表情の揺れ。
立ち姿の説得力——それらが、じかに心へ届いてきたのです。
「こんな舞台もあるんだ。もっといろんな作品を観てみたい。
ちゃんと、確実にチケットを取る方法を探さなきゃ——」
と、強く思うかてこさんだったのでした。
“自分の足で観に行った”という特別な経験
この頃のかてこさんには、まだ“推し”もいませんし、ファンクラブにも入っていません。
直感と偶然とタイミングで出会えたこの一本が、
”自分の足で観に行った最初の舞台”として、特別な意味を持ちました。
そして、「もっと多くの舞台と出会いたい」という想いが芽生え、
かてこさんの“舞台”活動が加速していく——
そんな“はじまりの1本”にもなったのです。
次回は、かてこさん流・観劇情報の集め方
観たい舞台に出会うために、どうやって情報を探す?
どうすればチケットを取れる?
観劇初心者だったかてこさんが編み出した「情報収集術」を深掘りしていきます。
舞台ファイル:【人形の家】
かてこさんが赴いた時期やキャストは以下の通りです。
公演スケジュール:
【公演期間】2008年 9月 5日(金)〜9月30日(火)
【会場】Bunkamuraシアターコクーン
【作】ヘンリック・イプセン
【キャスト】
宮沢りえ=ノラ・ヘルメル
堤真 一=トルヴァル・ヘルメル
神野三鈴=クリスティーネ・リンデ夫人
山崎 一=ニルス・クロクスタ
千葉哲也=ドクター・ランク
松浦佐知子=アンネ・マリーエ(乳母)
明星真由美=へレーネ(メイド)