みなさまは、少女漫画史上最長と聞いてどの漫画を思い浮かべますか?

最長級のひとつとして呼び声が高いのが、1976年10月号から『月刊プリンセス』(秋田書店)で連載スタートした細川智栄子あんど芙〜みん氏原作による『王家の紋章』。

2025年現在、実に49年継続連載中の超大作です。
この壮大な歴史ロマンは、古代エジプトの王メンフィスと現代の少女キャロルの“時を超えた愛”を描く物語。

2016年には帝国劇場の大舞台で鮮やかに、その世界観を音楽、歌唱、衣裳の力で見事に具現化されました。
日本発、そして世界初の舞台化。漫画原作での本格ミュージカル──
かてこさんが見逃すわけがなく、もちろん行って参りました。

(2021年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)

2次元からよみがえる黄金の姫キャロルと黒髪の女王アイシスの対比

考古学を学ぶためエジプト留学中の大手企業社長令嬢の主人公キャロル。
天衣無縫で愛されキャラの少女が、古代エジプトの王メンフィスとともに生きていくと決意し、
“エジプトの女王になる”という奇跡を新妻聖子さんが体現。
強さと可憐さ、純粋な情熱をあわせ持つキャロル像に、観客の心が吸い込まれます。

一方、古代エジプトの王メンフィスの姉・アイシスを演じた濱田めぐみさんは圧巻の存在感。
妖艶でありながらも気高く、愛と嫉妬に揺れる女性像を見事に表現していました。
幼き頃から弟を誰よりも愛しながら、その愛が決して報われない悲劇。
届かぬ想いに苦しむアイシスの歌唱は、観ている側の胸にも突き刺さるような切なさを帯びていました。

二人の歌唱力が織りなす「光と影の対比」こそ、この作品の核心のひとつです。

(2017年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)

情熱的な愛で包むエジプト王メンフィスと静かな愛を捧げるヒッタイト王子イズミル

黒髪長髪で凛々しくも妖艶な美貌を持つメンフィス。
少年王らしい気性の荒さと勇猛果敢さ、時に冷酷さすら感じる“絶対的な王”が、
現代から来た少女キャロルによって次第に真実の愛を知っていく姿を、浦井健治さんが熱く演じ切りました。

その一方で、ヒッタイト王子イズミルは静寂の中に燃えるような想いを秘めた人物。
最初は復讐のためにキャロルへ近づくものの、やがてその誠実さと慈しみで彼女を守ろうとする。
平方元基さんや大貫勇輔さんによるイズミルは、どこまでも知的で深い優しさを湛えていました。

メンフィスの「炎のように荒ぶる愛」と、イズミルの「月光のように静かな愛」。
同じ“愛”でありながら、対照的な二人の想いが交錯することで、物語のドラマ性がいっそう際立ちます。

(2017年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)

特筆すべきは衣装の再現度の高さ

少女漫画原作の中でもとりわけ『王家の紋章』は、民族的装飾を細密に描くことで知られています。
手描きでここまで描けるのかと思うほどの繊細なデザインが、舞台上で見事に再現されていました。

金色に輝くメンフィスの王衣装、深紅に染まる女王アイシスのドレス、
そしてキャロルとメンフィスが結ばれる黄金の結婚式衣装――。

どの衣装も漫画の1コマから抜け出したかのような完成度で、観客を一瞬にして古代の王宮へと誘います。
美術・照明・音楽が一体となり、壮麗なエジプトの世界が立ち上がる瞬間は、まさに鳥肌ものでした。

観劇ド素人所感

観劇ド素人のわたしですが、かてこさんとともに初演・再演ともに足を運んでしまったほど、素晴らしい舞台でした。

原作ファンとしての期待をはるかに超える再現度、そして舞台でしか味わえない“命を持った王家の世界”。
舞台美術、照明、音楽、衣裳、すべてが融合して生まれる“古代エジプトの息づかい”に、ただただ圧倒されました。

原作の中で特に好きだった女王アイシスの衣装、
胸から腰にかけて蛇が巻き付いたような黒のタイトドレスで登場した瞬間はとても印象的で、
その造形美と存在感は圧巻で、思わず魅入ってしまいました。

“王家の紋章”というタイトルにふさわしく、壮大で、気高く、そして美しい――。
時空を超えた愛の物語は、まだまだ進化し続ける予感。
日本を代表するミュージカルとして、今後も定番上演してほしい作品です。

また、原作が完結したら、60巻で止まっているわたしの記憶も更新してみようと思うのでした。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

関連作品

王家の紋章 (第1巻) (プリンセスコミックス) 1977年 細川 智栄子 (著)

王家の紋章 1 (プリンセス・コミックス) Kindle版 細川智栄子あんど芙~みん (著)

※1~70巻まで出ていました!(2025年12月現在)
少女漫画ならではの金髪、きらっきらの瞳のヒロイン、当時サスペンスに凝っていて読んでみたら、
時を超えた愛の物語でびっくりしたものの、行く末が気になって読み続けてしまったのを思い出します。

舞台ファイル:ミュージカル 王家の紋章

かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通り。

【公演名】ミュージカル 王家の紋章
【公演期間】2021年 08月 05日 〜 2021年08月28日
【会場】 帝国劇場
【原作】細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【脚本・作詞・演出】荻田浩一
【作曲・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ
【製作】東宝株式会社
【キャスト】
メンフィス(エジプトの若き王):浦井健治/海宝直人(Wキャスト)
キャロル(現代のアメリカ人少女):神田沙也加/木下晴香(Wキャスト)
イズミル(ヒッタイトの王子):平方元基/大貫勇輔(Wキャスト)
アイシス(メンフィスの姉):朝夏まなと/新妻聖子(Wキャスト)
ライアン(キャロルの兄):植原卓也
ミタムン(イズミルの妹):綺咲愛里
ナフテラ(エジプトの女官長):出雲 綾
ルカ(イズミルの部下):前山剛久/岡宮来夢(Wキャスト)
ウナス(キャロルの警護役):大隅勇太/前山剛久(Wキャスト)
イムホテップ(エジプトの宰相):山口祐一郎

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【公演名】ミュージカル 王家の紋章
【公演期間】2017年 04月 08日 〜 2017年05月07日
【会場】 帝国劇場
【原作】細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【キャスト】
※2016年と同じ

(2017年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)

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【公演名】ミュージカル 王家の紋章
【公演期間】2016年 08月 05日 〜 2016年08月27日
【会場】 帝国劇場
【原作】細川智栄子あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【脚本・作詞・演出】荻田浩一
【作曲・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ
【製作】東宝株式会社
【キャスト】
メンフィス(エジプトの若き王):浦井健治
キャロル(現代のアメリカ人少女):宮澤佐江/新妻聖子(Wキャスト)
イズミル(ヒッタイトの王子):宮野真守/平方元基(Wキャスト)
アイシス(メンフィスの姉):濱田めぐみ
ライアン(キャロルの兄):伊礼彼方
ミタムン(イズミルの妹):愛加あゆ
ナフテラ(エジプトの女官長):出雲綾
ルカ(イズミルの部下):矢田悠祐
ウナス(キャロルの警護役):木暮真一郎
イムホテップ(エジプトの宰相):山口祐一郎

(2016年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)