舞台『いのこりぐみ』は、三谷幸喜氏脚本による、
登場人物わずか4人で送るワンシチュエーションのディスカッション劇です。
“モンスターペアレント”をテーマに、
放課後の小学校の教室で繰り広げられる対話を描く社会派コメディ。
笑いとスリリングな展開、どんでん返し、ミステリー要素。
教育現場が抱える問題を浮き彫りにする一作です。
それだけで、1時間45分、休憩なし。
にもかかわらず、体感はあっという間。
年間100公演超えで舞台へ赴くかてこさんにとっても、
満足度の高い一作だったようです。
教室で始まる“2対1”の面談
若手教師(小栗旬さん)とベテラン教頭(相島一之さん)が、教室で母親を待っている。
「7時には帰りたい。ジムに行く予定がある。」と時間を気にしている若手教師。
緊張感というよりも、日常の延長のような空気が流れています。
そこへ、方向音痴気味に現れる母親。
演じるのは、舞台初挑戦の菊地凛子さん。
これから“モンスターペアレント”と対峙する時間が始まります。

(2026年かてこさん撮影:アイ エム エム シアターにて)
しつこい母親? それとも正当な訴え?
母親の主張はシンプルです。
「息子が担任にないがしろにされている。担任を変えてほしい。」
息子が描いた絵だけが教室に貼られていない。
学芸会では、母親が作った衣装が目立ちすぎるからと役を変えられ、
最終的には裏方に回された。
過保護な母親はヒートアップしていきます。
この訴えに対し、皆様ならどう受け止めますか?

(*イメージ図です。)
伏線回収の快感
教師側は母親の主張をやんわりと躱しながら、担任継続へ向けて話をまとめようとします。
しかし後半へ向けて、物語が大きく切り替わる「転」の瞬間が訪れます。
そこから怒涛の伏線回収の波が押し寄せてくるわけですが、
物語の進行より先にこの「転」に気づくことができたら、
もうあなたは名探偵です(笑)。
目の前にある複数の事実から、
みなさまならどんなひとつの真実にたどり着きますか?
観客自身が思考を求められ、自然と巻き込まれていく構造が秀逸でした。
「十二人の怒れる男」を思わせる構造
密室、対話劇、価値観の転換。
構造としては、映画『十二人の怒れる男』にも近い要素があります。
一方向から見えていた事実が、別の角度から照らされることで姿を変えていく。
三谷幸喜氏脚本の凄みは、
笑いを交えながら、最後に一気に伏線を回収する構成力。
ものの見方ひとつで、善悪は驚くほど簡単にひっくり返る。
観客もまた、“思い込みの当事者”であることに気づかされます。
最後まで思考し続ける舞台の凄み
・三谷脚本の完成度の高さ
・4人芝居で緊張感を維持する集中力
・菊地凛子さんのしつこさと不穏さのリアリティ
・小栗旬さんの“普通の先生”感が物語を支えていること
怖さというよりも、
「固定概念」という殻が少しずつ剥がれていくように、
じわじわと真実が明るみになっていく感覚がありました。
1時間45分、休憩なし。
教室から一歩も出ないのに、思考は何度も裏返る。
集中して、最後まであっという間に見届けてしまった舞台でした。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。
関連作品
密室劇やディスカッション型の作品が好きな方には、
映画『十二人の怒れる男』もおすすめです。
一つの事実を、複数の視点から再検証していく構造。
本作と通じる“思考型エンタメ”の原点とも言える作品です。
舞台ファイル:舞台『いのこりぐみ』
今回、かてこさんが赴いた日程は以下の通りです。
【公演名】舞台『いのこりぐみ』
【公演期間】2026年 01月 30日~2026年 02月 23日
【会場】アイ エム エム シアター(東京ドームシティ内)
【作・演出】三⾕幸喜
【キャスト】
主人公・若手教師役:⼩栗旬
児童の母親役:菊地凛⼦
児童の担任教師役:平岩紙
ベテラン教頭役:相島⼀之
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この舞台の記録も、
“舞台ファイル”のひとつにすぎません。
年間100公演以上を16年間継続しているかてこさん。
チケットの山とともに積み重なってきた観劇の記録が、
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その原点と歩みは、こちらから辿ることができます。
年間100公演という歩みの中で、
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