ふとした瞬間に、
ずいぶん昔の自分の姿を思い出すことはありませんか?
そのときは良かれと思っていた行動や、
前に進もうとして選んだ振る舞いが、
時間を経て、少し違う形で見えてくる。
自分が覚えている記憶と、
誰かの中に残っていた記憶が、
ずれていたと気づく瞬間がある。
舞台『シャイニングな女たち』は、
そんな「行いと時間の距離」を、
鋭さを内包しながらも、とても丁寧に描いていく作品でした。
前情報なく、ふらっと足を運んだかてこさん、
今回は、いつもより少し、言葉を失ったまま劇場を後にしています。

(2025年かてこさん撮影:PARCO劇場にて)

(2025年かてこさん撮影:現物ではなく画像で紹介されるお祝いのお花たち)
“偲ぶ場”に身を置くという、少し不思議な趣味
主人公・金田海には、少し変わった習慣があります。
それは、見知らぬ人の「お別れの会」や「偲ぶ会」に参加すること。
ホテル内を通過しようとした際、
遺族に関係者と勘違いされたことをきっかけに、
その場に自然と溶け込んだ経験が、
いつの間にか彼女の生活の一部になっていました。
誰かの人生の終わりに立ち会うことで、
自分の存在意義を見出しているかのように、
善意の行いに救われているかのような感覚。
その静かな日常が、ある日、思いがけず揺らぎます。
再会の場所が、過去を呼び戻す
いつものように参加していた偲ぶ会で、
主人公は、大学時代のフットサル仲間に声をかけられます。
集まっていたのは、
かつて同じ時間を過ごした仲間たちと顧問。
そして、そこにいない一人の存在が、
自然と会話の中心になっていきます。
主人公は、大学でフットサル部を立ち上げ、
キャプテンを務めていた人物でした。
積極的で、場を動かす存在だったはずの彼女が、
この場には「呼ばれていなかった」ことが明らかになります。
そこから、時間は過去と現在を行き来し始めます。
同じ人を見ていたはずなのに
語られていくのは、
それぞれの立場から見た主人公「金田海」という人物像です。
明るく、頼れるキャプテン。
さばさばしていて、付き合いやすい人。
けれど、触れられたくない話題になると黙る人。
誰も事実と異なることを語っているわけではありません。
けれど、同じ時間を共有していたはずなのに、
それぞれの記憶は少しずつ違っている。
後輩の活躍をきっかけに、
チーム内の空気が変わっていったこと。
同じポジションに立つ者同士の、
言葉にしづらい感情。
どれも、特別な出来事ではなく、
現実の社会のどこにでもありそうな感覚として描かれていきます。
時間を経て、別の場所で息づくもの
亡くなった彼女は、大学時代に漫画を描いていました。
その中に描かれていた物語は、
長い時間を経て、別の形で人の目に触れることになります。
創作の中で語られた視点と、
現実で共有されていた時間。
その間に生まれたわずかなズレは、
誰かの意図とは関係なく、
静かに、確かな存在感を持って広がっていきます。
現実社会でも容易に放たれ拡がっていくように。
抗いながら、それでも前を向く姿
登場人物たちは、
何かを完全に取り戻すわけでもなく、
すべてが整理されるわけでもありません。
それでも、
立ち止まらず、
それぞれの場所で歩みを続けていきます。
その姿は、とても静かで、
同時に、とても逞しく映ります。
観終わったあとに残るもの
『シャイニングな女たち』は、
分かりやすい答えを提示する舞台ではありません。
代わりに、
観客自身の中にある記憶や、
かつての自分の姿を、そっと呼び起こします。
自分は、どんな光を放とうとしてきたのか。
そのとき、周囲はどんな景色を見ていたのか。
過去の行いは、
静かに形を変えながら、
唐突に、思いがけず、
私たちの前に現れる可能性があること。
そこに意志に反して悪意が含まれていたとしても、
前を向くこと。
歩き続けること。
止まることなく、
完全に戻ることもなく、
それでも次へ進んでいく。
この舞台は、そのことを、
声高にではなく、
とても丁寧に伝えてくれる作品として心に刻まれました。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2025年かてこさん撮影:後方でも舞台が近く感じるPARCO劇場)
舞台ファイル:舞台『シャイニングな女たち』
今回、かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通りです。
【公演名】パルコ・プロデュース2025『シャイニングな女たち』
【公演期間】2025年 12月 07日 〜 2025年12月28日
【会場】 PARCO劇場
【作・演出】蓬莱竜太
【製作】株式会社パルコ
【キャスト】
主人公・金田 海:吉高由里子
主人公親友・山形圭子:さとうほなみ
女子フットサル部顧問・川越瑞希:山口紗弥加
女子フットサル部後輩・白澤喜美:桜井日奈子
女子フットサル部チームメイト:小野寺ずる、羽瀬川なぎ、李そじん
主人公&親友の同級生:名村辰