2026年7月28日、IMM THEATERで上演された『いきなり本読み!』を観劇してきたかてこさん。
この日の出演者は、篠井英介さん、浜中文一さん、冨田侑暉さん(龍宮城)、キムラ緑子さんの4人。
司会・演出を務めたのは、俳優・劇作家・演出家の岩井秀人さんです。
『いきなり本読み!』は、出演者が本番の舞台上で初めて台本を開き、
その場で役を与えられて演じていく「初見の台本読み合わせライブ」。
一般的な舞台のように、俳優が稽古を重ねて役をつくり込んでから観客の前に立つのではありません。
出演者たちは、自分がどのような物語に出演するのか、どの役を演じるのかも知らされないまま舞台へ登場します。
「俳優さんたちが机を並べて、本読みを舞台上でやる。
でも、誰がどの役を演じるのかも、その場で初めて発表されるんです。」
完成した芝居を観るのではなく、俳優が台本と出会い、
言葉を読み、役を探し始める瞬間を観客も一緒に体験する。
朗読劇とも通常の演劇とも違う、予測できない舞台、
年間100公演以上観劇するかてこさんにはどんな体験になったのでしょうか。

(2026年かてこさん撮影:IMM THEATER前にて)
出演者も知らない物語が舞台上で始まる
舞台上には机が並び、出演者4人が台本を手に座ります。
物語には複数の登場人物が登場し、シーンが始まる直前に、
「この役は〇〇さん」
と、舞台上の画面に配役が表示されます。
出演者は、その場で自分の役を確認し、台本を読みながら、
声の高さや話し方、人物の性格を瞬時に考えて演じ始めます。
この日読まれたのは、現実世界とゲームの中の世界を行き来する少年たちの物語でした。
主人公は、ゲーム好きの少年・かける。
ゲームの中では、イケメン戦士のシュナイダー、筋骨隆々のゴンブトとチームを組み、3人で敵と戦っています。
最初にかけるを演じたのは冨田侑暉さん。
シュナイダーを篠井英介さん、ゴンブトをキムラ緑子さんが演じました。
出演者が台本を2、3ページほど読み進めたところで、
岩井さんから突然、「ストップ」の声がかかります。
そこで役に対する演出が加えられ、俳優たちは同じ場面をもう一度演じ直します。

(※画像はイメージです。)
「ショタ感を出して」突然加えられる演出
冨田さんが演じるかけるに対して、岩井さんから出されたのは、
「僕が考えるかけるは少年だから、もう少しショタ感を出してほしい」
という演出でした。
さらに岩井さんは、
「ショタ感ってわかる?」
と冨田さんに問いかけます。
冨田さんは、言葉の意味を完全にはつかめていない様子。
そこから「ショタ」という言葉の由来が、
漫画『鉄人28号』の主人公・金田正太郎にあるという話まで飛び出します。
本来なら稽古場で演出家と俳優の間だけで交わされるような会話を、
観客もそのまま見守ることができる。
そして、指示を受けた俳優が声や表情を変え、
少しずつ役へ近づいていくところまで目の前で見られるのです。
最初はただ台本を読んでいた人物に、演出をきっかけとして性格や感情が加わっていく。
その変化が、企画の大きな面白さでした。
シーンが変わると配役も変わる
『いきなり本読み!』では、ひとりの俳優が最後まで同じ役を演じるわけではありません。
シーンが終わるたびに配役が入れ替わり、
先ほどまで冨田さんが演じていたかけるをキムラ緑子さんが演じ、
シュナイダーを浜中さんが演じることもあります。
同じ人物でも、演じる俳優が変われば声も空気も大きく変化します。
一方で、初めて読んだ台本から、すぐにすべての役を理解できるとは限りません。
かける役を担当した緑子さんは、「かけるが全然つかめない」と率直に口にします。
岩井さんから人物像の説明を受けながら、自信のなさを抱えた少年として演じていきますが、
それでも簡単には役をつかみ切れない様子でした。
完成された舞台では、俳優が役を理解できずに迷っている姿を、
観客が見ることはほとんどありません。
しかし、この企画では、その迷いも含めて舞台の一部。
役がぴたりとはまる俳優もいれば、人物像を探しながら台詞を読む俳優もいる。
その違いを見られるところも、とても新鮮でした。

(2026年かてこさん撮影:開演前、席からの視界)
観客も物語の登場人物になる
物語の戦闘シーンでは、観客が出演者と一緒に本読みする展開へ。
「お前も本読み!シート」を獲得した観客の特権が、ここで発動します。
舞台上の4人だけでなく、参加席に座った観客にも台詞と役が与えられ、物語の一部を読み上げます。
ある人は、かける。
ある人は、母親。
ある人は、戦いを見守る人物。
客席から突然、さまざまな声が物語へ加わっていきました。
俳優の本読みに観客が飛び入りで参加することで、
舞台と客席の境目がなくなっていくような感覚が生まれます。
かてこさんが観た回では、世界を救うために、かけるがボスと戦うも、
体を粉々にされてしまう場面もありました。
「やっぱり僕じゃ駄目だったんだ」
と絶望するかける。
すると、参加席の観客が、かけるを励ます台詞を投げかけ、
その言葉を受け、ばらばらになったかけるは体を取り戻し、地獄から復活する展開。
観客の台詞回しも、棒読みの方もいれば、感情のこもった上手い方もいたり。
「いきなり本読み」という前提があるからこそ、その素人感さえ逆に面白く、笑いになります。
そこまで見越しての演出なのだとしたら、その構成にも凄みを感じてしまいます。
この日、本読みされた台本のストーリーもしっかり面白く、
真剣な戦いの最中に突然入る脱力感と、
先の読めない展開に、客席からも笑いが起こっていました。

(※画像はイメージです。)
役をつくる途中だからこそ見られるもの
『いきなり本読み!』では、シーンごとに配役が変わり、
俳優たちは異なる役を行ったり来たりしながら物語を進めていきます。
瞬時に人物像をつかみ、声を変えて演じる人。
演出を受けることで、役が一気にはまる人。
人物像をなかなかつかめず、迷いながら台詞を読む人。
そのすべてが隠されることなく、観客の目の前に現れます。
浜中さんが演じた母親役も、自然で良い雰囲気。
篠井さん、冨田さん、緑子さんも、それぞれの個性と経験を使って、
その場で与えられた人物を立ち上げていきました。
「この役は、この人に合っている」
と感じる瞬間もあれば、
「この人が演じると、同じ役でもこう変わるのか」
と驚く瞬間もあります。
役をつかめない時間さえも含めて面白い。
完成された演技だけではなく、俳優が迷い、考え、
試しながら役へ近づいていく過程を見られることが、この企画の魅力だと感じました。

(2026年かてこさん撮影:IMM THEATER)
朗読劇とも違う、一度きりの舞台
『いきなり本読み!』は、台本を手にして演じるという点では朗読劇にも見えます。
しかし、あらかじめ稽古された朗読劇とは、まったく異なるものでした。
俳優が初めて台本を読み、物語を理解しようとする。
岩井さんが途中で芝居を止め、人物像や演じ方を伝える。
その指示を受けた俳優が、もう一度台詞を読み直す。
さらにシーンごとに配役が変わり、時には観客も物語へ参加する。
そこにあるのは、完成された作品の上演ではなく、物語と芝居が劇場で生まれていく時間です。
今回読まれた作品について、岩井さんは、
いつか実際に舞台化できたらという思いで書いていると話していました。
現実世界とゲームの世界が交錯し、個性的な人物たちが世界を救う物語は、
完成した舞台作品として上演されても面白そうです。
同時に、作品がまだ形を変えられる段階だからこそ、
今回のような自由さや予測不能な笑いが生まれたのかもしれません。
「初めまして」の台本と俳優から始まる本読みを、観客も一緒に見守る。
いつも観ている舞台が、稽古場でどのようにつくられているのか。
その入り口を少しだけのぞかせてもらったような、貴重な観劇体験となりました。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。
舞台ファイル:台本読み合わせライブ『いきなり本読み!』
かてこさんが赴いた公演日程は以下の通りです。
【公演名】台本読み合わせライブ『いきなり本読み!』
【公演日】2026年7月28日
【会場】IMM THEATER
【司会・演出】岩井秀人
【企画・制作】株式会社WARE、ゴーチ・ブラザーズ
【キャスト】
篠井英介、浜中文一、冨田侑暉(龍宮城)、キムラ緑子
観劇&ライブ プラスアイテム
劇場やライブ会場での時間、その日を、少しだけ快適にしてくれる観劇アイテムをまとめました。
みなさまの観劇体験がよりよいものとなりますように。
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2、3階席はもちろん1階席でも、表情や舞台設定、背景、衣装の細部まで楽しみたいときに。
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