宝塚雪組『ポーの一族』~2018年花組版を経て、再び出会った永遠のエドガー~

宝塚雪組『ポーの一族』~2018年花組版を経て、再び出会った永遠のエドガー~

永遠に14歳の姿のまま、時代を超えて生き続ける少年。

萩尾望都さんの名作漫画を原作とするミュージカル・ゴシック『ポーの一族』が、
2018年の花組初演を経て、雪組の舞台に帰ってきました。

今回、エドガーを演じるのは朝美絢さん。
そして本公演は、朝美絢さんと音彩唯さんによる雪組新トップコンビのお披露目公演でもあります。

かてこさんは2018年の花組公演も観劇済み。
当時、明日海りおさんが演じたエドガーの印象が強く残っているだけに、今回の再演を楽しみにしていました。

同じ物語でありながら、配役が変わることで、舞台にはどのような新しい命が吹き込まれるのか。

年間100公演以上観劇するかてこさんが、2018年公演からの変化も含めて振り返ります。

※本記事には物語の展開・結末に触れる内容が含まれます。

宝塚雪組『ポーの一族』~2018年花組版を経て、再び出会った永遠のエドガー~

(2026年かてこさん撮影:かてこさんの席からの視界)

永遠の時を生きる少年エドガー

人間の血を糧とし、老いることなく生き続ける種族「バンパネラ」。

幼い頃に妹メリーベルとともに森に捨てられたエドガーは、
老ハンナ・ポーに拾われ、ポーの一族のもとで育てられます。

やがて一族の秘密を知ったエドガーは、14歳の姿のまま、永遠の時を生きる運命を背負うことに。

ポーツネル男爵夫妻の養子となり、愛する妹メリーベルと再び暮らし始めるものの、
人間とは異なる存在であるがゆえに、彼らの平穏な日々は長くは続きません。

時代が移り変わり、人々が年老い、命を終えていく中で、エドガーだけは少年の姿のまま生き続ける。

永遠の命は、果たして幸福なのか。

美しいゴシックの世界に、家族への愛、喪失、孤独、そして新たな出会いが織り込まれていく物語です。

 

 

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2018年花組版から8年、再び出会ったエドガー

『ポーの一族』は、かてこさんにとって初めての観劇ではありません。
2018年に明日海りおさん主演で上演された花組公演も観劇しています。

小池修一郎さんが長年舞台化を夢見ていたという本作。
漫画ならではの幻想的な世界を、宝塚の舞台でどのように表現するのか。

当時も印象深い作品でしたが、今回あらためて感じたのは、
この作品は、誰がエドガーを演じるかによって、成立する世界観が大きく左右されるということ。

エドガーは、14歳で成長が止まった少年です。

宝塚のトップスターといっても、その魅力や持ち味はさまざま。
大人の男性としての包容力や力強さが似合う方もいれば、繊細で中性的な美しさを持つ方もいます。

『ポーの一族』の場合、主役に求められるのは、
永遠に14歳という設定を観客が自然に受け入れられる存在感ではないでしょうか。

その意味で、明日海りおさんのエドガーは、まさにはまり役でした。

そして今回、朝美絢さんが演じるエドガーもまた、違和感なくその世界に溶け込んでいました。

朝美絢さんが魅せる、永遠の14歳という存在

朝美絢さんのエドガーを観て、まず感じたのは、その端正な容姿と少年らしさの相性のよさ。

エドガーは、単に若く見えれば成立する役ではありません。
外見は14歳でありながら、実際には何十年、何百年という時間を生きていく存在。

少年の純粋さを残しながら、長い年月の中で積み重ねてきた孤独や諦観を内包していなければならない。

その相反する要素を、ひとりの人物として成立させる難しさがあります。

朝美さんのエドガーには、少年としての美しさと、どこか人間離れしたミステリアスな雰囲気がありました。

個人的には、エドガーという役は、トップスターであれば誰でも演じられるわけではないと感じています。

身長や骨格、顔立ち、立ち姿なども含め、原作が持つ美少年のイメージとの親和性が求められる役どころ。

明日海さんに続き、朝美さんもまた、エドガーという存在を自然に受け止められる配役で、
ただただ見惚れるほどにはまり役でした。

永遠の14歳という設定に無理を感じさせないこと。

それだけでも、この作品の世界観を支える大きな魅力だと思います。

宝塚雪組『ポーの一族』~2018年花組版を経て、再び出会った永遠のエドガー~

(※画像はイメージです。)

ポーツネル一家に描かれる、永遠の命と家族の愛

今回の雪組版で印象に残ったのは、エドガーを取り巻くポーツネル一家の物語です。

エドガーの養父フランク・ポーツネル男爵と、養母シーラ・ポーツネル男爵夫人。
そして、エドガーが何よりも大切にする妹メリーベル。

人間とは異なる存在でありながら、彼らの間には確かな家族の愛があります。

フランクとシーラ、永遠をともに生きる夫婦

ポーツネル男爵とシーラ夫人は、強い愛情で結ばれた夫婦。

もともと人間だったシーラもまた、男爵とともに生きる道を選び、バンパネラの一族となった人物です。

永遠の命というと、孤独や恐怖が先に浮かびますが、
この夫婦には、愛する人と同じ時間を生き続けたいという想いが感じられます。

一方で、永遠に続くはずだった日々も、決して失われないわけではありません。

バンパネラという存在を人間社会に知られたとき、一族は排除され、命を奪われていきます。

愛する人と永遠に生きたいという願いと、永遠だからこそ背負う喪失。

この対比が、物語に深みを与えていました。

エドガーとメリーベル、守り続けたい存在

エドガーにとって、妹メリーベルは特別な存在です。

自ら望んだわけではない永遠の命。

それでもエドガーが生き続ける理由のひとつには、メリーベルを守りたいという強い想いがあります。

今回の舞台では、エドガーとポーツネル男爵夫妻、そしてメリーベルを中心とした物語が、
より丁寧に描かれている印象を受けました。

家族として過ごす時間が描かれるからこそ、その後に訪れる別れが一層切なく感じられます。

バンパネラの一族が次々と失われていく中で、エドガーが背負っていくもの。

それは、単なる不老不死の宿命ではなく、大切な存在を失ってもなお続いていく時間なのかもしれません。

(※画像はイメージです。)

同じ物語なのに新しい。雪組版で感じた構成の変化

2018年の花組版を観ているため、物語の大筋はわかっています。

それでも、今回の雪組版は、同じ作品をただなぞっているという印象ではありませんでした。

特に感じたのは、エドガーとポーツネル一家、メリーベルの物語に厚みが加わっていたこと。

アランが登場するのは物語の後半ですが、そこへ至るまでのエドガーの歩みが丁寧に描かれているため、
最後の出会いにも自然につながっていきます。

配役や登場人物の出番に合わせて、歌唱パートにも新たな要素が加わっており、
再演でありながら、新しい作品として楽しむことができました。

また、本作は一般的な宝塚公演のように、お芝居とショーがそれぞれ独立した二本立てという構成ではありません。

物語そのものに長めの時間が割かれ、後半のショー要素は比較的コンパクト。

『ポーの一族』の世界をじっくり描くための構成といえるでしょう。

100年という時間が、舞台上では一瞬で過ぎていく

もうひとつ、この作品で面白いのは時間の描き方です。

舞台上では、突然100年という時間が経過することもあります。

普通に考えれば、かなり大胆な場面転換。

ところが、不思議なことに違和感がありません。

エドガーたちバンパネラは、時代が変わっても姿が変わらない存在です。

周囲の人間や社会だけが移り変わり、彼らは同じ姿のまま次の時代へと歩みを進める。

この設定そのものが、舞台上での時間の飛躍を自然に受け入れさせてくれるのでしょう。

何十年、何百年という年月を、限られた上演時間の中で描く。

舞台という表現だからこそ成立する、幻想的な時間の流れも魅力のひとつでした。

アランとの出会い。そして、続いていく永遠の旅

物語の後半で登場するアラン・トワイライト。

エドガーとメリーベルに出会い、やがてエドガーとともに永遠の時を生きることになる少年です。

今回のアラン役も、作品の世界観によく合っていたと感じました。

エドガーと同じく、少年らしさが求められる役どころですが、
アランにはエドガーとは異なる感情の動きや人間らしさがあります。

ふたりが並んだときのバランスも、この作品にとって大切な要素でしょう。

愛する妹メリーベルを失い、ポーツネル男爵夫妻も失ったエドガー。

それでも、彼の永遠の時間は終わりません。

そして最後に、アランという新たな存在とともに生きていく道へとつながっていきます。

永遠の命を持つことは、必ずしも幸福ではない。

けれど、ひとりではないということが、その果てしない時間を生きる意味になるのかもしれません。

エドガーとアランの旅は、ここからも続いていくのです。

宝塚雪組『ポーの一族』~2018年花組版を経て、再び出会った永遠のエドガー~

(※画像はイメージです。)

エドガーを演じられるトップスター

今回の雪組『ポーの一族』を観て、あらためて思ったこと。

それは、エドガーという役は、作品の世界観と演じ手の個性がぴたりと重なってこそ成立する、
特別な役なのだということです。

2018年の明日海りおさん。
そして2026年の朝美絢さん。

どちらも、14歳の美少年という設定を無理なく受け入れられる存在でした。

もちろん、ふたりのエドガーは同じではありません。
それぞれの持つ美しさや雰囲気が、同じ役に異なる魅力を与えています。

また、今回の再演では、ポーツネル一家やメリーベルとの関係性が丁寧に描かれたことで、
エドガーが永遠の時を生きることになった背景にも、より感情を寄せながら観ることができました。

原作の発表から50年以上。
2018年の初演から8年。

それでも、エドガーは14歳のまま、舞台の上に存在し続けています。

時代を超えて受け継がれる物語と、それを新たな形で表現する宝塚の舞台。

同じ作品を再び観る面白さを、存分に感じられる公演でした。

永遠の少年が問いかける、限りある時間の美しさ

『ポーの一族』は、不老不死の少年を主人公とした幻想的なゴシック・ロマンです。

けれど、その根底に流れているのは、家族を想う気持ちや、大切な人を失う悲しみ、
そして誰かとともに生きたいという、ごく人間的な感情なのだと思います。

永遠の命を持つエドガーだからこそ、限りある命の尊さが浮かび上がってくる。

朝美絢さんが演じる新たなエドガーは、そんな作品の世界観を崩すことなく、
再び観客を『ポーの一族』の時間へと誘ってくれました。

2018年の花組版を観た方にも、今回初めて作品に触れる方にも、
それぞれの楽しみ方がある舞台ではないでしょうか。

永遠に14歳のまま生きる少年。

その姿は変わらなくても、観る側が重ねてきた年月によって、
物語の受け止め方は少しずつ変わっていくのかもしれません。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

 

 

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関連作品

舞台『ポーの一族』を観て、エドガーたちが生きる永遠の時間を、もっと深く辿ってみたくなった方には、
萩尾望都さんの漫画原作『ポーの一族』を。

14歳の姿のまま時代を超えて生き続けるエドガー。
愛する妹メリーベル、ポーツネル男爵夫妻、そしてアランとの出会い。

舞台で描かれた美しくも切ない物語の原点には、バンパネラとして生きる者たちの孤独や喪失、
時を超えて続いていく人とのつながりが、より深く描かれています。

2018年の花組版、そして2026年の雪組版を観た方も、今回初めて『ポーの一族』の世界に触れた方も。

舞台から原作へ。

エドガーが歩んできた長い時間を、萩尾望都さんが描く原点から辿ってみてはいかがでしょうか。

舞台ファイル:宝塚雪組『ポーの一族』

かてこさんが赴いた公演日程は以下の通りです。

【公演名】宝塚雪組『ポーの一族』
【公演期間】2026年9月12日 ~ 10月25日
【会場】東京宝塚劇場
【原作】萩尾望都「ポーの一族」(小学館「フラワーコミックス」刊)
【脚本・演出】小池 修一郎
【企画・制作】宝塚歌劇団
【キャスト】
エドガー・ポーツネル:朝美 絢
メリーベル:音彩 唯
フランク・ポーツネル男爵:瀬央 ゆりあ
シーラ・ポーツネル男爵夫人:小桜 ほのか
アラン・トワイライト:縣 千
大老ポー:奏乃 はると
他

観劇&ライブ プラスアイテム

劇場やライブ会場での時間、その日を、少しだけ快適にしてくれる観劇アイテムをまとめました。
みなさまの観劇体験がよりよいものとなりますように。

双眼鏡(オペラグラス)

2、3階席はもちろん1階席でも、表情や舞台設定、背景、衣装の細部まで楽しみたいときに。

はじめての双眼鏡なら、小型なものから。

性能にも多少こだわりたい方には。

水筒

開演前後の水分補給に。劇場周辺で飲み物を探す手間を減らせます。

観劇中の集中力を維持するもの

BASE FOOD

小腹が空いて観劇の集中力が途切れないように。開演前や休憩時間に、手軽に栄養補給を。

ナリス ぐーぴたっクッキー

小腹が空いたときのお守りに。観劇前後の軽い携帯食として。

立見観劇にあると便利なもの

折り畳み椅子

立見だからって、立ちっぱなしでいる必要はないので、持っていくだけで快適に。

夏の観劇にあると便利なもの

携帯扇風機

駅から劇場までの移動や、開場待ちの暑さ対策に。

日傘

劇場までの移動や、物販列に並ぶとき、日差し対策に。

ネッククーラー

真夏の観劇・遠征・屋外待機の体力温存、熱中症対策に。

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