シリーズ累計1300万部突破(2025年1月現在)の
日本ファンタジー小説の金字塔『十二国記』が、
日本ミュージカル界を代表するクリエイター陣によって、ついに世界初の舞台化を果たしました。

原作は小野不由美による大河ファンタジー。
1991年刊行の『魔性の子』を起点に、翌年の『月の影 影の海』でシリーズ化。
2002年のアニメ化、そして2019年の新作長編刊行時には社会現象的な盛り上がりを見せ、
世代を超えて読み継がれてきた作品です。

本舞台で描かれるのは、シリーズ本編第一作『月の影 影の海』。
「こちらの世界」と「異世界・十二国」を行き来しながら、
一人の少女が“王になるまで”を辿る物語の世界へ、
さっそく、かてこさんも足を運んできました。

(2025年かてこさん撮影:日生劇場前にて)

二人の陽子が描く、分断された〈世界〉

主人公・中嶋陽子は、
我々の住む現代日本と、異世界〈十二国〉という、まったく異なる場所を生きる少女。

このミュージカルでは、
現代に生きる陽子と、異世界に連れ去られた後の陽子を、二人の俳優が演じ分けます。

異世界のヨウコを演じるのは、宝塚歌劇団退団後、東宝ミュージカル初主演となる柚香光さん。
現代の陽子を演じるのは、しなやかさと芯の強さを併せ持つ加藤梨里香さん。

同一人物でありながら、
「置かれた環境」によってここまで違う表情を見せる──
その対比が、舞台上で鮮明に立ち上がります。

舞台ならではの“異形”の表現

かてこさんが特に印象に残ったと語っていたのが、
怪物の表現方法でした。

巨大な鳥の怪物は、
顔と足爪のみを立体セットとして作り込み、
羽や全体の動きは映像と黒子による操作で表現されます。

さらに、舞台上には一般的なスクリーンではなく、
すだれ状の白いカーテンのような装置が用いられ、
そこに映像を投影することで、
現実と異界の境界が曖昧に溶け合う感覚を生み出していました。

「これは舞台でしかできない」
そう感じさせる、非常に巧みな視覚表現です。

優しすぎた少女が、試され続ける物語

現代の陽子は、
周囲に嫌われないよう、常に顔色をうかがいながら生きる少女。

髪の色が少し明るいだけで、
勝手な噂や決めつけに晒され、
自分のやりたいことを選ぶ余地すら持てない環境にいます。

そんな彼女が、ある日突然、異世界へと連れ去られる。
教師に髪色を咎められている最中、
異世界の人物が現れ、職員室の窓が割れ、
すべてが“陽子のせい”にされていく場面は、
彼女が生きてきた世界の理不尽さを象徴していました。

(2025年かてこさん撮影:強くあろうとする想いまで感じる見事に再現されたポージング!)

異世界は、決して優しくない

異世界に行けば、何かが好転する──
そんな期待は、ことごとく裏切られます。

剣を渡され、戦うことを強いられ、
生き延びても守ってはもらえない。
助けられたと思えば裏切られ、
女郎屋に売られそうになり、
宿屋で出会った同郷の人間には、翌朝すべてを奪われる。

「異世界に行って、いいことがひとつもない」

その過酷さが、容赦なく積み重なっていきます。

それでも、進むしかない旅

逃げ続けながら、
「最初に会った人物に真実がある」という言葉だけを頼りに、
陽子は旅を続けます。

やがて船で国を渡り、
自分が治めるはずだった国では、
王座が奪われ、
彼女を異世界へ連れてきた人物は囚われていることを知る。

そこから始まるのは、
王座を取り戻すための戦いであり、
同時に、自分自身の意思を取り戻す物語でもありました。

観劇ド素人所感

この舞台が突きつけてくるのは、
「強くなれ」という単純なメッセージではありません。

優しさゆえに傷つき、
選ばなかったことで、選ばされ続けてきた少女が、
“それでも自分で決める”ようになるまでの、長い道のり。

異世界ファンタジーでありながら、
どこか現代を生きる私たち自身の姿と重なって見える──
そんな、不思議なリアリティを持った舞台でした。

今回は配信で観劇。
現地へ赴くほうが熱量を感じられたと思いますが、
異形の大きな怪物を舞台全体で表現する仕掛けなど、
配信でも全体感がわかる視点で観られたので遜色ありません。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

関連作品

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫) 文庫 – 2012/6/27
小野 不由美 (著), 山田 章博 (イラスト)

月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫) 文庫 – 2012/6/27
小野 不由美 (著), 山田 章博 (イラスト)

舞台ファイル:ミュージカル『十二国記』

今回、かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通りです。
【公演名】ミュージカル『十二国記』
【公演期間】2025年 12月 09日 〜 2025年12月29日
【会場】 日生劇場
【原作】小野不由美『月の影 影の海 十二国記』(新潮文庫刊)
【演出】山田和也
【脚本・歌詞】元吉庸泰
【製作】東宝株式会社
【キャスト】
ヨウコ(中嶋陽子):柚香 光
陽子(中嶋陽子):加藤梨里香
楽俊らくしゅん:太田基裕/牧島 輝(Wキャスト)
蒼猿あおざる/塙王こうおう:玉城裕規
舒栄じょえい:原田真絢
延王えんおう:章平
景麒けいき:相葉裕樹
壁落人へきらくじん:伊藤俊彦
達姐たっき:桜雪陽子
塙麟こうりん:三浦優水香
延麒えんき:砂田理子