ミュージカル『最後の事件』~作家と登場人物が対話する、2人芝居の極致~

ミュージカル『最後の事件』は、
1893年に発表された短編「最後の事件」をモチーフに、韓国で創作された2人芝居です。

作家アーサー・コナン・ドイルと、彼が生み出した名探偵シャーロック・ホームズ。
本来は交わることのない2人が、小説と現実の狭間で対話を始める――。

世界的な成功の裏で、
自身の作品と向き合い続けたドイルの葛藤と決断が、舞台上で濃密に描かれています。

2026年2月某日、オケピ貸切公演で観劇したかてこさん。
舞台と客席の距離が近い空間で、どんな舞台体験となったのでしょうか。

(2026年かてこさん撮影:博品館劇場にて)

小説と現実が交錯する、異質な構造

本作の中心にあるのは、
作家アーサー・コナン・ドイルと、
彼が生み出したシャーロック・ホームズ。

本来、交わるはずのない2人が、
同じ舞台上で対話を始めます。

・物語を書く者
・物語の中で生きる者

その境界が曖昧になった瞬間、
この作品は単なるミステリーではなく、
“創作そのもの”を描く物語へと変わっていきます。

(※イメージ画像です。)

「売れるもの」と「書きたいもの」のあいだで

ドイルは、ホームズを書くことで成功した作家。
しかし同時に、本当に書きたいのは別ジャンルの小説でした。

けれど世間は、
“シャーロック・ホームズ”を求め続ける。

この構図は、どこか現実にも重なります。

・評価されるもの
・自分がやりたいこと

そのズレが、
ドイルをある決断へと向かわせていきます。

「終わらせる」という選択

物語を書かなければならない理由は、
“彼が生きているから”。

ならば――
終わらせてしまえばいい。

この発想が、物語を動かしていきます。

ホームズを“終わらせる”ことで、
自分自身の人生を取り戻そうとするドイル。

しかし、
物語の中の存在は、
そう簡単には消えてくれません。

ピアノ1本、2人芝居という極限

舞台は極めてシンプルです。

・ピアノ1本
・セット展開なし
・登場人物は2人のみ

それでも、
場面が不足することはありません。

むしろ――
余計なものが一切ないからこそ、
演技・歌・感情のすべてが際立っていました。

空間の密度は、想像以上に濃い。

演者の実力がすべてを決める舞台

この作品は、
キャストの力量がそのまま作品の完成度に直結します。

同じ台本でも、
組み合わせによって全く違う表情になる。

それゆえに――
「リピートしたくなる舞台」でもあります。

“どのホームズか”
“どのドイルか”

その違いを楽しめるのも、本作の魅力です。

(2026年かてこさん撮影:博品館劇場にて)

小劇場だからこそ成立する“音”

そして今回印象的だったのは、歌の“響き方”。

会場サイズがコンパクトだからこそ、
声が空間にダイレクトに届く。

マイク越しではない、
“生の振動”として伝わってくる感覚。

この体験は、
大劇場ではなかなか得られないものです。

(2026年かてこさん撮影:博品館劇場座席表)

韓国発ミュージカルという切り口

本作は韓国発の作品で、

・2人芝居
・心理戦
・構造的な物語

「作家と登場人物が対話する」

この発想自体が、非常にユニークで、強い。

これまでの韓国ミュージカルの中でも、

・2人芝居としての完成度が非常に高い
・演技力で空間を成立させている
・ピアノ✕ 歌 ✕ 台詞のバランスが良い
・リピート前提で楽しめる作品
・小劇場ならではの没入感が強い

という、満足度の高い舞台体験となりました。

物語は、誰のために存在するのか

・読者のためか
・作者のためか
・登場人物のためか

この作品を観終えたあとに残るひとつの問い。

その答えは、
きっと観る人によって変わるはずです。

そしてミュージカル『最後の事件』の着地がどうなるのか。
その答えは、ぜひ劇場で体感してみてください。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(Coffee break…)
次のページをめくる前に、温かい一杯を。

ブルーボトルコーヒー

舞台ファイル:ミュージカル『最後の事件』

今回、かてこさんが赴いた日程は以下の通りです。

【公演名】ミュージカル『最後の事件』
【公演期間】2026年2月7日 ~ 2026年3月8日
【会場】博品館劇場
【脚本・作詞・演出】ソン・ジェジュン
【作曲】ホン・ジョンイ
【翻訳・訳詞・演出補】福田響志
【音楽監督】岩崎 廉
【製作】ぴあ、シーエイティプロデュース
【キャスト】
アーサー・コナン・ドイル役:加藤和樹、矢崎 広、髙橋 颯
シャーロック・ホームズ役:渡辺大輔、太田基裕、糸川耀士郎

関連作品

もしこの物語を観終えたあと、
「最後の事件」という物語そのものを、もう一度辿ってみたくなったなら。

アーサー・コナン・ドイルが1893年に発表した短編
『シャーロック・ホームズの回想』に収録されている「最後の事件」は、
シャーロック・ホームズという人物の運命を大きく動かした、非常に重要な一編です。

舞台では、作家ドイルとホームズが対峙する関係で描かれていましたが、
原作では“探偵シャーロック・ホームズ”そのものの物語が描かれています。

舞台を観たあとに原作を読むと、
「作者はどんな思いで、この物語を書いたのか」
そんな視点が加わり、同じ物語でもまた違った受け止め方になるはずです。

舞台の余韻とともに、原作の物語を辿る。
そんな贅沢な時間をあなたにも。

原作『シャーロック・ホームズの回想』はこちら

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