最近、ふとアニメ『ガラスの仮面』を一気見し直して、
2016年9月、かてこさんとともに観劇した舞台『ガラスの仮面』を思い出しました。
『ガラスの仮面』といえば、美内すずえ氏による大人気少女漫画。
1975年から連載が始まり、長期にわたり多くの読者を惹きつけ続けている作品です。
天才的な演劇の才能を持つ北島マヤ。
恵まれた環境と努力、そして圧倒的な実力を持つ姫川亜弓。
ふたりが幻の名作『紅天女』の主役を目指して競い合う物語は、
演劇を題材にした作品の中でも、特別な存在感があります。
年間100公演以上、劇場へ足を運ぶかてこさんとともに、
原作からそのまま飛び出してきたような再現度の高さと、
今後の原作の続きにも期待してしまうような舞台を振り返ります。
原作ファンが思わず前のめりになるビジュアル再現度
舞台化作品を見るとき、特に原作ファンとして気になるのは、
やはりキャラクターの再現度。
もちろん、漫画と舞台は表現方法が違います。
漫画のコマの中にいる人物を、生身の俳優が舞台上で演じる以上、
まったく同じになるわけではありません。
それでも、この舞台『ガラスの仮面』は、登場人物が現れた瞬間に
「あ、いる」と思わせてくれる力がありました。
貫地谷しほりさん演じる北島マヤ。
マイコさん演じる姫川亜弓。
小西遼生さん演じる速水真澄。
一路真輝さん演じる月影千草。
それぞれが、ただ見た目を寄せているだけではなく、
その人物が持つ空気や立ち方、視線、声の温度まで含めて、
“ガラスの仮面”の世界に合っていました。
特に月影先生は、原作からそのまま出てきたような存在感。
一路真輝さん演じる月影千草は、厳しさ、気高さ、
そして女優としての業の深さまで感じさせる、
登場するだけで舞台全体の空気が変わる印象さえありました。
「ああ、月影先生だ」と思える納得感がありました。

(2016年かてこさん撮影:新橋演舞場にて)
貫地谷しほりさんの北島マヤが、本当に“舞台あらし”だった
北島マヤという役は、とても難しい役だと思います。
普段はどこか素朴で不器用。
けれど、演技に入った瞬間、まるで別人のように輝き出す。
その落差がなければ、マヤというキャラクターの魅力は伝わりません。
貫地谷しほりさんのマヤは、その変化がとても自然でした。
舞台上で役を演じているマヤを、さらに俳優が演じる。
つまり、役の中で役を演じるという二重構造になるのですが、
それが違和感なく成立していて、貫地谷しほりさんが演じる「マヤ」が、さらに劇中劇の役を演じている。
その二重の演技構造を自然に見せる表現力が圧巻でした。
ただの主人公ではなく、まわりの人間を巻き込み、
舞台そのものの空気を変えてしまう“舞台あらし”としての北島マヤが、
しっかり舞台上に存在していました。
姫川亜弓の美しさと強さも、きちんと描かれていた
一方で、マイコさん演じる姫川亜弓もとても印象的でした。
姫川亜弓は、北島マヤのライバルでありながら、単なる対立相手ではありません。
生まれ持った美貌と才能。
演劇一家に生まれた環境。
そして、それに甘えない努力と誇り。
亜弓は、マヤとは違う形で演劇にすべてを懸けている人です。
舞台版でも、その気高さと強さがきちんと描かれていました。
特に劇中劇『ふたりの王女』では、亜弓が演じる冷酷な王女オリゲルドの迫力が素晴らしく、
マヤが演じるアルディスと対になる存在として、強い印象を残していました。
この作品の面白さは、マヤだけではなく、亜弓の存在もまた際立っているところにあります。
原作でも重要な劇中劇『ふたりの王女』が舞台上で表現され、
物語が原作に増して、リアルに熱を感じた瞬間でした。
劇中劇を“おまけ”にしない本気度が素晴らしい
そして、『ガラスの仮面』を舞台化するうえで、避けて通れないのが劇中劇です。
原作の中でも、マヤや亜弓がさまざまな役を演じる場面は大きな見どころです。
だからこそ、舞台版でその劇中劇が軽く扱われてしまうと、作品全体の説得力が弱くなってしまう。
でも、この舞台では劇中劇も見どころです。
劇中劇を単なる説明や再現で終わらせず、ひとつの舞台作品としてしっかり見せています。
特に『ふたりの王女』の場面は、衣裳も美術も演技も本気。
マヤが演じるアルディスの春のような温かさと優しさ。
亜弓が演じるオリゲルドの長引く冬の冷たさと孤独。
それぞれの役柄がしっかり立ち上がっていて、観ている側も「これは劇中劇だから」と距離を置かずに、
その物語の中へ没入できる仕上がり。
原作の名場面を舞台上で観られる喜びと、舞台だからこそ感じられる臨場感。
その両方を味わえる、贅沢な舞台でした。
速水真澄と紫のバラのひとの物語も、舞台上で生きていた
『ガラスの仮面』といえば、北島マヤと速水真澄の関係も欠かせません。
小西遼生さん演じる速水真澄は、冷静で大人で、
けれど内側に強い葛藤を抱えている人物として、とても魅力的でした。
真澄というキャラクターは、一歩間違えるとただの冷たい人にも見えてしまう役です。
でも、舞台上の真澄には、マヤへの想いを押し殺している苦しさや、
立場ゆえに動けないもどかしさがありました。
そして、東風万智子さん演じる水城秘書とのやりとりも良かったです。
真澄の張りつめた空気の中に、少しだけゆるく呼吸できる隙間を作ってくれる存在でした。
紫のバラのひとの物語が、ただの恋愛要素ではなく、
マヤの演劇人生を支え続けていくであろう人物として表現されていて安心したのを覚えています。
“紅天女”へ向かう物語としての高揚感
物語の中心にあるのは、やはり幻の名作『紅天女』です。
月影千草が上演権を持ち、北島マヤと姫川亜弓がその後継者を目指す。
この設定だけでも、演劇好きとしては胸が高鳴ります。
誰が紅天女を継ぐのか。
マヤなのか、亜弓なのか。
原作開始時点から、気になって気になって読み進めてしまう原作ファンの方も多いのではないでしょうか。
舞台版でも、最終的な決着はついてはいませんが、
紅天女の里で、一路真輝さん演じる月影千草が紅天女を演じる場面を
観られただけでも感動ものでした。
そして、マヤと亜弓が、それぞれの表現で『紅天女』へ近づいていく、
今後の展開への期待へと繋がる舞台でした。

(※画像はイメージです。)
『紅天女』とは、「ガラスの仮面」作中のオリジナル劇中劇作品名で、人間と梅の木の精との悲恋物語です。
キャスト全員がはまり役だった
この舞台で特に強く感じたのは、主要キャストだけではなく、全体のはまり具合です。
貫地谷しほりさんのマヤ。
マイコさんの亜弓。
小西遼生さんの真澄。
一路真輝さんの月影先生。
もちろんこの中心人物たちも素晴らしかったのですが、
周囲のキャラクターも含めて、作品世界を壊さない安心感がありました。
原作ものの舞台では、ひとりでも違和感のあるキャラクターがいると、
その世界からふっと現実に戻ってしまうことがあります。
でも、この作品はキャスト全員がそれぞれの役を大切にしていて、
衣裳やメイク、立ち居振る舞いまで含めて、原作への愛と敬意を感じました。
再演が待ち遠しい舞台のひとつ
観劇から数年が経っていますが、今でも印象に残っている舞台です。
原作の続きがどうなるのか。
最終的に誰が紅天女を継ぐのか。
もちろん、それは今でも気になります。
でも、それとは別に、この舞台版『ガラスの仮面』そのものを、もう一度観たいですね。
原作から飛び出してきたようなビジュアル。
キャスト全員のはまり役ぶり。
劇中劇を決して疎かにしない本気の演技。
そして、『ガラスの仮面』という作品が持つ、演劇への情熱。
舞台だからこそ映える作品『ガラスの仮面』。
漫画の中で描かれてきた、“演じる”ことを突き詰める怖さと喜びを、
生の舞台で観ることができた作品だったと思います。
舞台『ガラスの仮面』。
原作ファンとしても、観劇好きとしても、再演してほしい舞台のひとつです。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。
(Milk tea break…)
漫画原作舞台を観た夜は、ホットミルクティーを。
関連作品
舞台『ガラスの仮面』を観ると、あらためて原作漫画やアニメにも触れたくなります。
北島マヤと姫川亜弓が、それぞれの表現で演劇に向き合っていく姿。
そして、幻の名作『紅天女』へと続いていく長い道のり。
舞台版で感じた熱量の源流をたどるなら、まずは美内すずえ氏による原作コミックから。
マヤが演劇と出会い、その才能を開花させていく始まりを読むと、
舞台版で描かれた場面の輪郭がより濃いものになります。
また、アニメ版は、原作の世界観を映像で追体験したい方におすすめです。
演劇にすべてを懸ける少女たちの情熱や、マヤと亜弓のライバル関係、
そして“紫のバラのひと”との物語を、アニメならではのテンポで楽しめます。
『ふたりの王女』以外の劇中劇の本気度も映像化されています。
そして何より、声優さんたちの演技力、表現力が素晴らしいです。
舞台『ガラスの仮面』の余韻に浸りながら、
原作漫画やアニメで、もう一度あの演劇の世界へ戻ってみてはいかがでしょうか。
※2005年版アニメは、U-NEXT、dアニメストア for Prime Videoにて視聴可能です。
※以下は1984年版アニメです。
舞台ファイル:舞台『ガラスの仮面』
かてこさんが赴いた日程は以下の通りです。
【公演名】舞台『ガラスの仮面』
【公演期間】2016年9月16日 ~ 2016年9月26日
【会場】新橋演舞場
【原作】美内すずえ
【脚本・演出】G2
【キャスト】
北島マヤ:貫地谷しほり
姫川亜弓:マイコ
桜小路優:浜中文一(関西ジャニーズJr./公演当時)
速水真澄:小西遼生
水城冴子:東風万智子
月影千草: 一路真輝
速水英介:たかお鷹
尾崎一蓮:小林大介
鷹宮紫織:中山由香
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