高校1年生の夏、突然「体が入れ替わってしまう」。
これまでにも数多く描かれてきた設定ですが、
本作『君の顔では泣けない』が新しいのは──
入れ替わったまま15年間、”元に戻らない”という一点。

その ジャパンプレミア舞台挨拶付き上映に当選しまして、
芳根京子 × 髙橋海人という初共演コンビが挑んだ話題作『君の顔では泣けない』を
観にいくことができました。

物語の根底にあるのは、
「自分の人生は誰のものなのか?」
「手放したくない“今この瞬間”とは何か?」
という、入れ替わったという設定上、避けては通れない問い、です。

(2025年かてこさん撮影:イイノホールにて)

“15年間戻らない”という残酷なリアリティ

入れ替わり物の多くは、
「数日〜数週間の非日常」「一時的なハプニング」「すぐに元に戻る」
として描かれています。

しかし本作は違う。

他人の体で、他人の人生を15年間生き続ける。
結婚、出産、初恋、進学、就職、家族の死。
人生の転機を“自分の体では味わえない”15年間。

この長さが、設定として恐ろしく切ない。

二人の“同じ人生を共有するような”演技

芳根京子×髙橋海人という初タッグは、
入れ替わり後の“人格の混ざり方”を繊細に表現していました。

二人は「入れ替わった誰かを演じ続ける」という難題に挑みながら、
まるでひとつの人生を共有しているかのような自然さを生み出していました。

視線の動かし方、呼吸の仕方、
“その人が背負ってきた15年間”がにじむような演技。まさに、共闘。

かてこさん

本当に演技よかったです!二人が同じ人生を背負っている“重さ”が伝わってきました。

(2025年かてこさん撮影:イイノホールにて)

ジャパンプレミアの“生の声”が加速させる余韻

映画を観終わった直後に、
キャストの言葉を“生”で受け取れる舞台挨拶。

かてこさんはこれを
「映画と舞台のちょうど中間にいるような感覚」
と表現します。

作品の裏側、役作りの苦悩、撮影時の温度感。
スクリーン越しには届かない体温が、客席に直接届く瞬間。

あくまで映画がメインですが、
登壇者の言葉が入ることで
物語の裏側にある“温度”伝わり、深く心に残る特別な時間となりました。

この人生は誰のものか。

手放せない“今”とは何か。

入れ替わり、という一見ファンタジックな設定を使いながら、
実はとても現実的で、
誰の胸にも“痛み”として残るテーマを描いている作品。

・もし今日から10年、他人の体で生きるとしたら?
・自分の大切な瞬間を、自分として生きられなかったら?
・それでも人生を選び取り、愛し続けられるだろうか?

観客一人ひとりの「自分の人生」に触れてくる作品です。

かてこさん

自分の人生が自分の手にないってこんなに怖いんだ、と実感させられました。

観劇ド素人所感

生きること、誰かを好きになること、
家族と向き合うことは、
すべて「自分で選び、自分で経験」せず、第三者に委ねる、
想像できますか。

入れ替わりという軽やかな言葉とは裏腹に、
実際に描かれるのは“他人の人生の中で選択するという重さ”。

特に15年間の設定は、
物語の切なさを底から支えている大きな要素。

想像に反して、かてこさんの評価が高かったので、
視聴リストに追加しておきました。

今の自分の人生を「自分」として進む道を選択できることに
改めて幸せを感じる1本になりそうです。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

関連作品

単行本:君の顔では泣けない 君嶋 彼方 (著) 2021年

文庫:君の顔では泣けない 君嶋 彼方 (著) (角川文庫 2024年)

舞台ファイル:ジャパンプレミア舞台挨拶付映画『君の顔では泣けない』

かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通り。

【公演名】舞台挨拶付映画『君の顔では泣けない』
【公演期間】2025年 10月 01日
【会場】イイノホール
【原作】『君の顔では泣けない』
【著者】君嶋 彼方
【監督・脚本】坂下雄一郎
【キャスト】
坂平 陸:芳根京子
水村まなみ:髙橋海人
坂平 陸(高校時代):西川愛莉
水村まなみ(高校時代):武市尚士
田崎淳一:中沢元紀
蓮見涼:前原滉
坂平禄:林裕太
水村渚:大塚寧々
水村治:赤堀雅秋
坂平葉月:片岡礼子
坂平春樹:山中崇

(2025年かてこさん撮影:イイノホールにて)