1996年の宝塚歌劇団による日本初演、そして2000年から続く東宝版上演──。
ミュージカル『エリザベート』は、幾度の再演を経てもなお、多くの観客を魅了し続ける“東宝ミュージカルの金字塔”です。
物語を知っていても「毎回行きたくなる」と語るかてこさん。
2025年の最新公演では、熾烈なチケット争奪戦を乗り越え、5公演、主要キャストすべてを鑑賞するという充実の結果となりました。

(2025年かてこさん撮影:シアターオーブにて)
エリザベート:望海風斗と明日海りお、同期だからこその“生”の描き分け
舞台上では、エリザベートの10代から晩年までの長い時の流れが描かれます。
衣装・所作・声色までを変えながら、その生涯を演じ分ける高度な技術が必要な役どころです。
望海風斗さんは、ブレスが一切聞こえない完璧な歌唱で圧倒。
息遣いすら役に溶け込み、エリザベートの強さと儚さをまっすぐに表現していました。
明日海りおさんは、序盤はブレスがやや目立つものの、終盤には気にならないほど練度が上昇。
若く自由奔放な10代から、世界を旅し続けた晩年のエリザベートまで、まるで別人のように演じ分ける変化幅で、観客の心を掴みます。
特に「私だけに」の透明感ある高音には、
“宮廷に縛られても、心は決して縛られない”
というエリザベートの本質が宿り、思わず聞き惚れてしまう瞬間でした。
10月某日には、昼・夜2公演の“エリザベート浸り”の日を過ごしたかてこさん。
昼は〈明日海りお × 井上芳雄〉、夜は〈望海風斗 × 古川雄大〉という豪華な布陣。

かてこさん
正味6時間座っていましたが、本当によかった。毎日エリザベートの曲が脳内再生されるくらい余韻に浸っています。

(2025年かてこさん撮影:これぞエリザベートな衣装!その他場面ごとに変わる衣装はどれも必見です。)
トート:井上芳雄×古川雄大、異なる“死の美学”が魅せる世界
東宝版初演ではルドルフ、その後2015年からトートを演じ続ける井上芳雄さん。
舞台に降り立った瞬間から、空気すら震うような圧倒的存在感を放ちます。
一方、2012年にルドルフとして参加し、2019年からトート役へ転身した古川雄大さん。
透明感を帯びた高めの声質と繊細な歌い回しが特徴で、年を重ねるごとに深みと美しさが進化。
同じ“死”でありながら、井上さんとはまったく異なるアプローチで観客を惹きつけます。
エリザベートの「人」としての生において、
その時々に現れる「死」の象徴として具現化された存在であるトート
その代表的な歌である「最後のダンス」では、
井上トートは“圧”で迫り、古川トートは“静けさ”で誘う──。
どちらも息を呑むほどの美しさで、ブレスが聞こえないほど完璧な歌唱でした。
物語を立体化する、すれ違う“3つの愛”
『エリザベート』は、エリザベートの人生を描く作品であると同時に、
親子・夫婦・家族──3つの愛のすれ違い が胸に突き刺さる物語でもあります。
● 皇太后ゾフィーの息子への愛
国の安定を第一に考え、息子フランツを厳しく育てたゾフィー。
老いた皇太后が国と息子を案じる情感をのせて歌う「ゾフィーの死」は、その所作と顔色も相まって、胸が締めつけられる場面でした。
● 皇帝フランツのエリザベートへの愛
皇帝としての重圧、母への依存、エリザベートへの愛。
「エリザベート、開けておくれ」では、閉ざされた扉の前で歌う姿が、
“閉ざされた心の扉”を重ねさせる演出に。
愛が返ってこないことはわかっていても愛し続ける決意が感じ取れる二重唱「夜のボート」、
フランツの切実さが痛いほど響きます。
● 皇太子ルドルフの母への愛
母の愛を知らずに育ったルドルフが歌う「ママ、何処なの?」。
子役が歌い上げるその純粋な叫びは観客の胸をえぐり、
抱きしめたくなるほど切ない時間でした。
完成度の高い舞台だからこそ、何度観ても新しい
2012年に初めて『エリザベート』を観た際は「爆睡していた」と笑うかてこさん。
しかし2015年以降、その魅力に深くハマり、今では“通う作品”に。
王宮と黄泉の国を表現する重厚な舞台セット、
練り込まれた演出、壮大な生オーケストラ、
そしてキャストごとに異なる役の“魅せ方”。
再演ごとに進化し、観るたびに発見があるのが『エリザベート』の魅力です。


(2025年かてこさん撮影:第二幕の冒頭ルキーニが客席を歩いて渡す非売品カップ、
ちょうど皇帝&皇后でお持ちの方がいまして撮影許可をいただきました。)
観劇ド素人所感
東京千穐楽は配信で視聴したわたしですが、
アーカイブが公開されてから、すでに複数回再生してしまいました。
舞台全景と役者の表情を切り替える映像はとても見やすく、
「取れた席によっては、現地より配信のほうが細部が見えるのでは」と思うほど。
ただ──
キャストの息遣いや熱量、会場の空気、音の振動、あの匂い。
それを感じたいなら、やはり現地に勝るものはありません。
現地と配信、
いまはどちらも“作品により深く浸るための手段”。
そして、このハイブリッドスタイルも応援手段のひとつ。
主役のエリザベート、トートはもちろん、
皇帝フランツ、皇太后ゾフィー、ルキーニ、ルドルフ(青年/子役)まで、
どのキャストも情感が宿った歌声で心を震わせてくれました。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2025年かてこさん撮影:シアターオーブにて、豪華キャスト陣)
(Coffee break…)
次のページをめくる前に、温かい一杯を。
舞台ファイル:ミュージカル エリザベート
かてこさんのエリザベート観劇履歴は以下の通り。
【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2025年10月10日 〜 2025年11月29日
【会場】東急シアターオーブ
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):望海風斗、明日海りお
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、古川雄大、山崎育三郎
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):尾上松也、黒羽麻璃央
ゾフィー(オーストリア皇太后):涼風真世、香寿たつき
マックス(エリザベートの父):田村雄一
ルドルフ(オーストリア皇太子):伊藤あさひ、中桐聖弥
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):佐々木崇
ーーーー
【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2022年10月9日 〜 2022年11月27日
【会場】 帝国劇場
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、愛希れいか
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、古川雄大、山崎育三郎
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):黒羽麻璃央、上山竜治
ゾフィー(オーストリア皇太后):剣幸、涼風真世、香寿たつき
マックス(エリザベートの父):原慎一郎
ルドルフ(オーストリア皇太子):甲斐翔真、立石俊樹
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):佐々木崇

(2022年かてこさん撮影:帝国劇場前にて)
ーーーー
【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2020年4月9日 〜 2020年5月4日※全公演が新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止
【会場】 帝国劇場
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、愛希れいか
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、古川雄大、山崎育三郎
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):尾上松也、上山竜治、黒羽麻璃央
ゾフィー(オーストリア皇太后):剣幸、涼風真世、香寿たつき
マックス(エリザベートの父):原慎一郎
ルドルフ(オーストリア皇太子):三浦涼介
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):植原卓也
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【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2019年6月7日 〜 2019年8月26日
【会場】 帝国劇場
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、愛希れいか
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、古川雄大
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、平方元基
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):山崎育三郎、成河
ゾフィー(オーストリア皇太后):剣幸、涼風真世、香寿たつき
マックス(エリザベートの父):原慎一郎
ルドルフ(オーストリア皇太子):京本大我、三浦涼介、木村達成
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):植原卓也
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【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2016年6月28日 〜 2016年7月26日
【会場】 帝国劇場
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、蘭乃はな
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、城田 優
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):山崎育三郎、成河
ゾフィー(オーストリア皇太后):涼風真世、香寿たつき
マックス(エリザベートの父):大谷美智浩
ルドルフ(オーストリア皇太子):古川雄大、京本大我
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):角川裕明
ーーーー
【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2015年6月13日 〜 2015年8月26日
【会場】 帝国劇場
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):花總まり、蘭乃はな
トート(黄泉の帝王):井上芳雄、城田 優
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):田代万里生、佐藤隆紀
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):山崎育三郎、尾上松也
ゾフィー(オーストリア皇太后):香寿たつき、剣 幸
マックス(エリザベートの父):大谷美智浩
ルドルフ(オーストリア皇太子):古川雄大
ルドヴィカ(エリザベートの母)/マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):未来優希
エルマー(革命家リーダー):角川裕明
ーーーー
【公演名】ミュージカル エリザベート
【公演期間】2012年5月9日 〜 2012年6月27日
【会場】 帝国劇場
【演出・訳詞】小池修一郎
【脚本・歌詞】ミヒャエル・クンツェ
【音楽】シルヴェスター・リーヴァイ
【オリジナルプロダクション】ウィーン劇場協会
【製作】東宝株式会社
【キャスト】
エリザベート(オーストリア皇后):瀬奈じゅん、春野寿美礼
トート(黄泉の帝王):山口祐一郎、石丸幹二、マテ・カマラス
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):石川禅、岡田浩暉
ルイジ・ルキーニ(エリザベート暗殺者):高嶋政宏
ゾフィー(オーストリア皇太后):寿ひずる、杜けあき
マックス(エリザベートの父):今井清隆
ルドルフ(オーストリア皇太子):大野拓朗、平方元基、古川雄大
マダム・ヴォルフ(娼館の女主人):伊東弘美
ルドヴィカ(エリザベートの母):春風ひとみ
エルマー(革命家リーダー):岸祐二
観劇&ライブ プラスアイテム
劇場やライブ会場での時間、その日を、少しだけ快適にしてくれる観劇アイテムをまとめました。
みなさまの観劇体験がよりよいものとなりますように。
双眼鏡(オペラグラス)
2、3階席はもちろん1階席でも、表情や舞台設定、背景、衣装の細部まで楽しみたいときに。
はじめての双眼鏡なら、小型なものから。
性能にも多少こだわりたい方には。
水筒
開演前後の水分補給に。劇場周辺で飲み物を探す手間を減らせます。
観劇中の集中力を維持するもの
BASE FOOD
小腹が空いて観劇の集中力が途切れないように。開演前や休憩時間に、手軽に栄養補給を。
ナリス ぐーぴたっクッキー
小腹が空いたときのお守りに。観劇前後の軽い携帯食として。
立見観劇にあると便利なもの
折り畳み椅子
立見だからって、立ちっぱなしでいる必要はないので、持っていくだけで快適に。
夏の観劇にあると便利なもの
携帯扇風機
駅から劇場までの移動や、開場待ちの暑さ対策に。
日傘
劇場までの移動や、物販列に並ぶとき、日差し対策に。
ネッククーラー
真夏の観劇・遠征・屋外待機の体力温存、熱中症対策に。
関連記事
年間100公演以上を16年間継続しているかてこさん。
チケットの山とともに積み重なってきた観劇の記録が、
いまの「かてこさんの舞台帖」を形づくっています。
その原点と歩みは、こちらから辿ることができます。
年間100公演赴くかてこさん ~観劇ド素人が紐解く“舞台”の世界・序章~
16年分(記事投稿時)のチケットを並べて見えてきた、
かてこさんの観劇の歩み。
どんな作品を観て、どんな時期があって、
どうやって「年間100公演」という今に辿り着いたのか。
チケットの山が語る、かてこさん17年の“舞台”歴 〜年間100公演、その歩みを紐解く〜
年間100公演という歩みの中で、
かてこさんなりの“観劇スタイル”も少しずつ育ってきました。
観劇の日、その余韻をどう持ち帰るか。
そのひとつの答えを綴った記事はこちらです。
舞台は、一期一会。
同じ公演は、二度とありません。
だからこそ――
「観たい」という気持ちを、最後まであきらめない方法もあります。
チケットを“譲る人”と“譲ってもらう人”でつながる、
もうひとつの観劇のかたちについてまとめました。
チケットを“譲る・譲ってもらう”ってどうするの?~はじめての“リセール文化”入門編~
同じ舞台でも、
どこで観るかによって、まったく違う作品に見えることがあります。
前方・後方・上手・下手――
席によって変わる舞台の見え方については、こちらにまとめています。