ブリテンの王・リアは、老いを迎えた自らの王国を三人の娘たちに分け与えようとする。
「父をどれほど愛しているか」を問う王に、長女と次女は巧みに言葉を操り、父を喜ばせる。
だが、末娘コーディリアだけは真実の愛を飾らずに語ったことで、怒りを買い勘当されてしまう――。
シェイクスピア四大悲劇の一つとして知られる『リア王』。
今回は気鋭のイギリス人演出家フィリップ・ブリーンが新たに手掛け、
主演・大竹しのぶが初の男性役としてリア王に挑む話題作。
共演には宮沢りえ、成田凌、生田絵梨花、鈴鹿央士、横田栄司、安藤玉恵、勝村政信、山崎一ら、
実力派キャストが勢揃いした舞台。
言葉選びや台詞の難解さを少し構えていたものの、今回もかてこさんは劇場へ――。

(2025年かてこさん撮影:東急歌舞伎町タワー 6Fにて)
大竹しのぶさんの圧倒的な存在感
今回のチケットはなんと、大竹しのぶさんのファンクラブ枠で無料観劇してきました。
上演時間は約3時間半(2時間+休憩+1時間)と長めだったが、
眠くなるどころか、最後まで引き込まれた。
大竹しのぶさんの存在感と声の使い分けに圧倒されました。
リア王という“男性”を演じるため、低めの声を喉の奥から響かせ、台詞量も膨大。
それでも一つひとつの言葉が舞台上に凛として響いていました。
衣装も王らしい豪華さではなく、むしろ人間的で質素。
“王の威厳”を外見ではなく、言葉と感情で表現していたのが印象的でした。
舞台上で奏でる効果音の巧み
荒野で雨が降るシーンでは、実際に水が降り注ぐリアルな演出もあり、
シンプルな舞台構成ながらも、音と光と音楽の融合が見事でした。
舞台上には常にミュージシャンが位置し、
軍太鼓や弦楽が場面ごとに呼応して、緊張感と詩情を同時に生み出していた。
“音楽が芝居を語る”ような空間演出が心に残りました。
改めて考えさせられた情報社会での”言葉”
「言葉の力」をこれほど考えさせられる作品は、久しぶりでした。
甘く優しい言葉ほど、時に人を惑わせる。
嘘が真実を覆い、真実が届かない――そんな世界の悲しさ。
「言葉」だけを信じて、「悪」と言えば「悪」と決めつけてしまう。
確証もなしに、その「悪」という言葉を信じてしまう世界観。
「悪意」が混ざった時の「言葉」の怖さ、
SNS上での「言葉」が瞬時に流布する現在はことさら、
真実は見極めないといけないと、現代社会とも重なって見えてしまいました。
他人の言葉ではなく、当人の”声”を聞くこと、
そんな当たり前のことを、あらためて心に刻む時間でした。
時代を超えて語られるシェイクスピアの悲劇が、
いまを生きる私たちに“言葉の真実”を問う作品として蘇った舞台。
大竹しのぶさんが演じるリア王は、権威よりも「人としての弱さと赦し」を描き出し、
静かな終幕が深く胸に残った作品となりました。
観劇ド素人所感
「父をどれほど愛しているか答えよ」と問われたら、どう答えますか。
資産家の子として生まれ、この答えによって財産分与の割合が変わるとしたら、どう答えるか、想像してみてください。
「何よりも誰よりも父を一番に愛しています」
「父がいたからこそ私がこの世に存在しています。父は何をもにも代えがたい愛すべき存在です。」
「父の子として愛しております。それ以上でも以下でもありません。」
それぞれの答えに、どういう真意を受け止めるでしょうか。
子が欲を出すのも当然だし、父は嬉しい耳心地の良い言葉を待っているし、
リア王の立場だとして、この答えだけで、
愛の深さを判断して分配するのはかなり難しいなと感じてしまった観劇ド素人のわたしです。
言葉だけで「愛の深さ」を測ろうとした――
その瞬間こそが、この物語の悲劇のはじまりだったのかもしれません。
ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2025年かてこさん撮影:東急歌舞伎町タワー前にて)
舞台ファイル:『リア王』
かてこさんが赴いた舞台日程は以下の通り。
【公演名】『リア王』
【公演期間】2025年 10月 09日 〜 2025年11月03日
【会場】 THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6階)
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【上演台本・演出】フィリップ・ブリーン
【作主催/企画・製作】Bunkamura
【キャスト】
リア王:大竹しのぶ
ゴネリル:宮沢りえ
エドマンド:成田凌
コーディリア:生田絵梨花
エドガー:鈴鹿央士
ケント伯:横田栄司
リーガン:安藤玉恵
道化:勝村政信
グロスター伯爵:山崎一
その他: 西尾まり、大場泰正、松田慎也、和田琢磨、吉田久美、青山達三、井上 尚、比嘉崇貴
<ミュージシャン>会田桃子(Vla.)、熊谷太輔(Perc.)、平井麻奈美(Vc.)