舞台『ポルノスター』~ナンセンスと狂騒の先にある“不条理ファンタジー音楽劇”~

ポルノスター用アイキャッチ

2026年4月、新国立劇場 中劇場 にて上演された舞台『ポルノスター』。

主演に 安田章大さん、共演に古田新太さん、
作・演出は 青木豪氏です。

7年ぶりに集結したこの座組が描くのは、
“明るさ”と“危うさ”が同居する、不条理犯罪ファンタジー音楽劇。

80年代ディスコサウンドに乗せて展開される物語は、
笑いながらもどこか不穏で、最後まで予測がつきません。

「これは舞台でしか成立しない」
そんな予感とともに足を運んだかてこさん。
どんな衝撃的な舞台となったのでしょうか。

(2026年かてこさん撮影:新国立劇場 中劇場にて)

物語の始まりは「探し人」の依頼から

物語は、安田章大さん演じる私立探偵・森田林深志(もりたばやし ふかし)の事務所から始まります。

家族の問題――15年前に失踪した父の名義が残る家の処理――を巡り、
山崎静代さん演じる姉の緑(みどり)と話をしていたところに、奇妙な依頼人が現れます。

訪ねてきたのは、古田新太さん演じる美容外科医の鶏野村誠也(とりのむら せいや)と
川島海荷さん演じるその娘マリア。

依頼内容は、
「ある男を探してほしい」というシンプルなもの。

その“探し人”というのが、
小松利昌さん演じるAV男優兼薬剤師の夢園杜莉雄(ゆめぞの どりお)。

・職業設定がすでに怪しさ満載
・案の定、裏の顔がある
・噂の絶えない人物

で、最初から不穏な匂いをまとった存在。

ここから物語は一気に、
現実なのか、非現実なのか、境目が曖昧な狂気の世界へと転がり始めます。

次々と明らかになる“違和感”

調査を進める中で浮かび上がるのは、
依頼人一家のどこか歪んだ関係性。

・父と娘の距離感
・家庭内の力関係
・過去に関わる出来事

一見コミカルに描かれながらも、
その裏には“普通ではない何か”が潜んでいます。

さらに、探している人物の周囲でも

・人間関係のトラブル
・過去の因縁
・姿を消した理由

などが断片的に語られ、
物語は徐々に輪郭を持ち始めていきます。

“音楽劇”として加速するカオス

本作の大きな特徴は、
この不穏なストーリーをポップな“音楽”で一気に押し進める点。

80年代ディスコをベースにした楽曲に乗せて、

・登場人物の感情
・関係性の変化
・状況の転換

がテンポよく描かれていきます。

高岡早紀さん演じる美容外科医の鶏野村誠也の妻 令美も歌い、
山崎静代さん演じる私立探偵ふかしの姉 緑も歌う。

シリアスになりきらない、
どこか“軽やかさ”を保ったまま進行するため、
観客はクスッと笑いながら物語に引き込まれていきます。

(2026年かてこさん撮影:120分休憩なし、ぶっ通しの舞台でした!)

物語の核心にある“過去と認識のズレ”

終盤に向かうにつれて見えてくるのは、
登場人物たちが抱える「過去」と「記憶」の問題。

・ある出来事をきっかけに変わってしまった関係
・現実の受け止め方の違い
・それぞれが見ている“世界”のズレ

それらが交錯することで、
物語はより不条理な様相を強めていきます。

ただし本作は、それを重く描き切るのではなく、
あくまで“エンタメとしての勢い”で突き抜けるのが特徴。

このバランスが、本作ならではの魅力です。

そして回収される舞台タイトル「ポルノスター」とは?

ポルノスターとは、作中に登場する“ある薬の名前”。
しかしその正体は、想像されるようなものではなく、どこか拍子抜けするような存在。

この“期待とズレ”こそが、本作らしいオチのひとつと言えるでしょう。

好みは分かれるが、唯一無二の体験

・「何が起きているのか」を理解するより、体感するタイプの作品
・クセの強いキャラクター同士の掛け合いが見どころ
・音楽と演出の勢いで一気に押し切る構成
・ストーリーの受け取り方は観る人によって分かれる

特に印象的なのは、
“違和感を違和感のまま楽しませる”演出。

『ポルノスター』を一言で言うと、
少しクセの強いユーモアも含めて楽しめる舞台、ですね。

・ナンセンス
・80年代パラパラ楽曲
・人間ドラマ
・独特のユーモア

これらが混ざり合った、非常に個性的な作品です。
万人におすすめできるタイプの舞台ではありませんが、

“普通では物足りない人”に強く刺さる一作ではないでしょうか。
舞台でしか成立しえない表現、演出を、
全力で体現したエンターテインメントでした。

ステージに立つ人、その世界を創り上げるすべての人に、心から拍手を。

(2026年かてこさん撮影:最近は控えめになってきたスタンド花やお祝い花もしっかりありました。)

(Coffee break…)
次のページをめくる前に、温かい一杯を。

ブルーボトルコーヒー

舞台ファイル:舞台『ポルノスター』

今回、かてこさんが赴いた日程は以下の通りです。

【公演名】舞台『ポルノスター』
【公演期間】2026年3月28日 ~ 2026年4月12日
【会場】新国立劇場 中劇場
【作・演出】青木豪
【音楽監修・出演】ベッド・イン(益子寺かおり 中尊寺まい)
【企画・製作】パルコ/キューブ
【キャスト】
私立探偵・森田林深志(もりたばやし ふかし):安田章大
美容外科医・鶏野村誠也(とりのむら せいや):古田新太
美容外科医の鶏野村誠也の妻 令美(れみ):高岡早紀
美容外科医の鶏野村誠也の娘 マリア:川島海荷
私立探偵・森田林深志の姉 緑(みどり):山崎静代
AV男優兼薬剤師・夢園杜莉雄(ゆめぞの どりお):小松利昌
マジシャン・長稲仁政(ながいね・じんせい):村木仁
失踪した父親・森田林一則(もりたばやし・かずのり):南誉士広

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